優位

 ネクタイで手首を縛られてベッドに寝転ぶ辰巳直也を見下ろすのはなかなか愉快だった。私が中途半端にはだけさせたカッターシャツからは小ぶりな乳首が覗き、ベルトだけ外したスラックスからはグレーの下着。

「これってこういう縛るプレイするための棒かな?」

 それなのに辰巳直也はどこか余裕だから腹が立つのだ。今もネクタイを縛り付けているベッドにある棒を眺めている。知らねーよ、ラブホなんだからそうなんじゃないの?

「ねえ、黙っててね。萎えるから」
「はーい」

 私の言葉にも辰巳直也は楽しそうに返事した。
 シャツの隙間から手を入れる。滑らかな肌、硬い筋肉。大好きな男の身体に私は手を滑らせ、そして唇を付けた。ところどころ甘噛みをして、舐める。熱くなっていく体温に思考がドロドロと溶け出した。

「はー、あっつい」

 着ているシャツを脱ぎ、下着だけになる。楽しそうに笑っている辰巳直也の喉仏が分かりやすく上下した。

「ねえ、余裕ぶった顔してるくせに、私の身体見て興奮するんだ?」

 見せ付けるようにブラ紐を下ろす。食い入るように見つめる辰巳直也の口元にはまだ笑みが浮かんでいる。ああ、この余裕崩したいなぁ。辰巳直也のそれが、下着の中でぴくんと震えたのが分かった。たまんない、食えない男を拘束して犯す感覚。

「おっぱい見たい?それともここ舐めて欲しい?」

 下着の上からぐりぐりと亀頭を人差し指で押すと、辰巳直也は「っ、」と短い声を出した。ゾクゾクする。

「はー、これヤバいね。俺、女の子を気持ちよくさせるのが最高って思ってたけど、新しい扉開きそう」
「そんなのいいからどうしてほしいか早く言ってよ」
「どっちもでしょ」
「は?」
「おっぱい見たいしちんこも舐めて欲しい」
「調子に乗るな」

 勃起したそれを掌で叩く。辰巳直也はケラケラと笑って「女王様風最高」と言った。

「おっぱいで挟んで欲しいな。よだれいっぱい垂らして滑り良くして、智代ちゃんの大きくて柔らかいおっぱいに俺のちんこ挟んで欲しい」

 この男には「恥ずかしい言葉を言わせる羞恥プレイ」は全く通用しないと分かった。何だかちょっとげんなりした気持ちになりながらブラを外して辰巳直也のパンツを下ろす。パンツに引っかかるほど勃起しているそれはお腹に付きそうなほどだった。

「相変わらず大きいのが腹立つ」
「褒めてくれてありがとう」

 ニコニコと笑う辰巳直也を睨み付けて、それに唾を垂らす。ビクンビクンと痙攣しているそれが濡れていくのが卑猥で少しだけ呼吸が荒くなった。

「美味しそうだなーと思ってる?」
「っ、はあ?思ってないけど」
「俺は智代ちゃんのおっぱい見て美味しそうと思ってるけど」
「あっそ」

 心を読まれたかと思ってちょっとだけ焦った。辰巳直也の大きいそれをフェラしたいなって思った。それで、もっともっと大きくなって濡れたそれを、私の中に突っ込んで何も考えられないくらいめちゃくちゃに突いてほしいなって。でも今日は絶対にこの男の思うようにはさせないと決めたのだ。
 おっぱいの間にそれを挟んでぬちゅぬちゅと擦り上げる。おっぱいの間から覗くそれを舌先で舐め、同時に唾を垂らす。

「っ、あ、」

 辰巳直也の口から甘い吐息が漏れて、その上気持ち良さそうに眉間に皺を寄せているものだから、とてつもなく気分が良くなる。このままおっぱいでイッてくれないかなぁと思いながら先端を咥える。舌で亀頭を舐め回せば、先っぽから苦い液体が出てきた。

「はぁ、智代ちゃん、イきそう……」

 この食えない男を、私が責めてイかせるのか。ぶわっと全身の毛穴が開いたみたいに興奮する。おっぱいをもっと寄せて激しく上下させる。そして亀頭をじゅっと吸い上げた。

「っ、あ、」

 びゅる、と唇に飛んできた。そして次に鼻に、ほっぺたに。とろりと垂れてきた白濁が口の中に入ってきて、唇に残っていたそれも舐め取る。はぁ、相変わらず不味いなあ。でも、

「やばい、めちゃくちゃ興奮しちゃった」

 イッたばかりのそれに舌を這わせ、割れ目に少しだけ残っていた精子も全部吸い取る。「あっ、」という声と同時に辰巳直也の腰がビクビクと揺れた。

「智代ちゃん、やばい、俺今日何回もイッちゃいそう……」

 イッたばかりなのにまた勃ち上がったそれがめちゃくちゃえっちで興奮する。はー、はー、と荒い呼吸でそれを見ていたら、唾が辰巳直也の太股に垂れた。興奮しすぎてよだれ出ちゃったことに気付かなかった。こんなの初めて。

「はー、もう挿れたい……」
「いいけど智代ちゃん、俺も智代ちゃんに触りたいんだけど」
「だめ、今日は私がするって言ったでしょ」

 自分の指を舐めて濡らすと、中心に指を這わす。辰巳直也のそれの上に座って自分で中に指を挿れる。もうぐっしょりと濡れているけれど、辰巳直也のそれが大き過ぎてそのまま挿れるのが怖かったから。

「あっ、はぁ、はっ」
「俺女の子のオナニー目の前で見たの初めて」

 じゅぷ、じゅぷ、と指を抜き差しする度にえっちな音がする。たっぷりと濡れたそこから蜜が溢れてお尻にまで垂れる。私のお尻の下にある辰巳直也のそれもどんどん濡れていく。

「はぁ、智代ちゃん、これ外してよ……」
「絶対だめ」

 舌舐めずりをして私のそこを食い入るように見つめる辰巳直也。その興奮しきった目が堪らなくて指の動きが激しくなる。

「あっ、ああっ、出ちゃう、」
「っ、智代ちゃん、自分で触って潮噴いちゃうの?」
「はっ、んっ、出ちゃう、自分で触って、おしっこ漏らしちゃ、あっ、あっ、あああっ」

 ぶしゅっと一旦そこから噴き出したそれはなかなか止まらなかった。腰を痙攣させながら何度も潮を噴き出す。辰巳直也の身体や顔を濡らしていくのをうっとりしながら見ていた。

「舐めたい」
「やだ」
「お願い」
「やだってば。もう挿れるの」
「意地悪」

 頬を膨らませる辰巳直也にイラッとしながらそれを掴む。そして中心に充てがうと、ゆっくりと腰を下ろした。

「あっ、ああっ、大きい……っ」
「相変わらず、よく締まる……!」
「大きくて、一番奥まで来る、はっ、ああっ、気持ちいい……!」

 気持ち良くて何も考えられない。自分でも中に入っている辰巳直也の自身を締め上げているのが分かる。挿れただけでイくなんて、この男が初めてで癪に触る。
 辰巳直也は壮絶な色気を纏って快感に堪えているようだった。眉間に寄った皺や歯を食い縛る顔も、とんでもなく顔の作りがいい男がやるととんでもない。とんでもないからとんでもない。

「はぁ、キスしていい?」
「キスしてくれるの?嬉しい。ついでに腕も解いてくれると嬉しい」
「それはダメ」

 舌を出すと辰巳直也が口を開ける。餌を待つ雛鳥のようで少しだけ可愛いと思ってしまった。

「あー……」
「ん、」

 私が垂らした唾液をごくんと呑み込む辰巳直也。はぁ、やばいなこれ、ハマりそう。

「ねえ、今まで何人の女の子とえっちした?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「めちゃくちゃ慣れてるから」
「喜んでいいのか複雑。俺は智代ちゃんみたいにヤリチンじゃないよ」
「誰がヤリチンだよ」

 私だって恋愛してるのに。セックスしちゃダメなの?別に結婚してるわけでもない、彼氏がいるわけでもない、彼女持ちには絶対手を出さない。自分なりに誰かを傷付けないようにルール作ってるのに。

「もし俺のこと好きになってくれたら俺以外とセックスしないの?」
「あー、ありえないたらればは言わない主義なんだ」

 めちゃくちゃ気持ちいいセックスしてるんだから、冷めるようなこと言わないでよ。辰巳直也の腰の上で馬鹿みたいに腰を振る。何度もイッて、潮を噴いて、辰巳直也も2回イッた。

***

「さ、帰ろ」
「シャワー浴びないの?」
「家で浴びる」
「送るよ」
「平気」
「だめ。女の子一人でこんな時間に帰すはずないでしょ」

 お互いに服を整えて(もちろん辰巳直也の腕の拘束も解いて)、帰る用意をする。ポン、と頭の上に手を乗せられて戸惑った。女の子扱いされるのは久しぶりだった。セックスだけして、誰も私をただの女の子のように扱ってくれなかったなと気付く。まあ、セックスが目的なんだから別にどうでもいいけど。

「また智代ちゃんが不完全燃焼の時は俺を呼んでね」

 辰巳直也がニコニコと笑って私を見下ろす。嫌だと思っても私は多分、またこの男に連絡してしまう。こんなに気持ちいいセックスを知ったらきっと、もう忘れられない。またすぐに求めてしまう。

「さ、帰ろうか」

 辰巳直也は紳士的に私を家まで送り届けてくれた。

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