補給班長の業務日誌 | ナノ

補給班長の業務日誌

In the longest day in history! 07
予想通り、コンテナの一角のアルミが、調和の力によって城の石材に、分解の力によって速やかに崩壊していく。ボスの匣兵器選定テストを見ていたからこの匣の能力は知っていたが、いつみてもすさまじい能力だ。

崩れたコンテナの壁から星空をバックに立つボスが見えた。ボスの手に収まる小さな箱にオレンジ色の炎の軌跡を描いてベスタ―が戻っていく。炎に一瞬照らされた彼の顔には珍しくけががあった。何があったんだろう。気にはなるが、どうせ教えてはもらえまい。

ぼけっとボスを見ていると彼の力強い腕に引っ張り出された。ブーツの中で指先を動かす。僅かに動く。とりあえず一部が壊死して切断というシャレにならない事態にならなくてほっとした。ただ、しばらくの間冷やされていたせいか足にうまく力が入らない。よろけたらボスに毛布で簀巻きにされて荷物を運ぶように肩に乗せられた。ロマンもへったくれもない光景だ。

「最悪でも首から上だけは助けてやるっつっただろ」
「ありがとうございます」
「今はまだ首から上だけを保存する技術はないからな、体ごと助けてやる」
「ありがとうございます……うわっ」
「待ってたわよ〜。よかったわねえ、氷漬けにならなくて。はいこれ、ココアよ。今だけは補給のことを部下に任せてゆっくり温まって頂戴」
「ええ、ありがとうございます。ココアがすごく暖かいです」
「                」
「え?今ボスなんと」

ボスはココアをつくって待っていたルッスーリア隊長に私を文字通り投げると、小さく何事かを言い残して去っていった。何をおっしゃったのか聞き返そうとしたのにボスはずんずんとお気に入りの椅子のところに戻っていってしまった。常人より耳がいいルッスーリア隊長はしっかりと聞こえたらしく、あらまあ!と野太い声を上げて喜んでいた。何を言われたのかますます気になるが、無理に聞いてかっ消されるのは嫌だ。悪口じゃないならまあいいか。

暖かいココアを両手で包み込むように持ってちびちびと飲みながら、星空を仰ぐ。コンテナが転げまわることになった時に城が崩壊していたのだろう、あたり一帯はがれきの山になってしまっていた。
生き埋めになった隊員の捜索に用いる小型レーダーがないと騒ぐ部下の片割れの声が聞こえる。
この一杯を飲み終わるころには、脚も動くようになるだろう。そうしたら無線の予備をもらって部下に指示を飛ばさねば。戦いが終わっても、我々にはやるべきことが山ほど残っているのだから。


In the longest day in history!


(私が今からいうことはボスには内緒にするのよ。いいわね?)
(?)
(『お前がいるから俺たちは戦えるんだ』ですって〜すごいじゃな〜い!)
(!?)
(んまぁ!せっかく作ったココアを吹き出しちゃうなんて勿体ないわねぇ)

- 7 -
[*前] | [次#] ページ:
Top
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -