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▼ 帰り道


あの日、私に、
ちいさな奇跡が起きた。






いつもの帰り道、――いつの間にか『いつもの帰り道』になっていた、本当は遠回りの道。


今日はあの草野球チームの練習はない。

だけど習慣になってしまったのか、最近は無意識にこの道を通ってしまう。



私の帰り道は、グランドの周りを半周する形になる。

誰もいない夕暮れ時のグランドは、びっくりするくらい静かで、そこだけ時が止まってしまっているみたいだ。



もうすぐ夏が来るんだなあ、と考えながら歩いていると、無人のはずのグランドから、「やべっ!」という声がした。


それと同時に、白いボールが足元に転がってくる。


私は思わずそのボールを拾う。

野球のボールに触ったのは初めてだ。
思っていたより硬い。



ボールが転がってきた方向に目をやると、ユニホーム姿の誰かが、こちらへ走ってくるのが見えた。

逆光で顔はよく見えない。




だけど、

さっきの、声は。

もしかして。



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