恋、急速上昇中。〜不器用なカレ〜 | ナノ

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注:この作品は、短編小説『恋、急速上昇中。』の続編です。前作を先にお楽しみ頂くことをお薦めします。
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「なぁ、何かおかしくね? このポジション」

 学校帰りに立ち寄ったファーストフード店の一角で、苛立ちを募らせた鷹斗が我慢の限界だと言わんばかりにテーブルの下で足を揺すっている。

「……な、何が?」

「とぼけんなよ! 普通お前はこっちだろ、何でそっちに座ってんだよ!?」

 大きな怒り声がフロアに響き、客の視線は一斉にこちらへ集中する。
 我に返った鷹斗が大きく咳払いをすると、隣に座る優斗がいつものように冷静になだめに入った。

「鷹斗、迷惑だから。まずは落ち着いて話をしよう」

「あぁ? 優斗、お前も何でここにいるんだ。いちいち邪魔すんな、ついてくんな!」

「僕は小春に頼まれて来たんだよ」

 鷹斗の鋭い視線の先が私へと変わり、びくっと身が縮む。
 そんな、私だって好きで優斗にこんなことを頼んでるわけじゃない。
 ただ、こうでもしないといけない理由があるからで……―――

「だ、だって」

「何だよ、ハッキリ言えよ。俺に愛想つかしたならそう言えばいいだろ。嫌いになったなら嫌いって……」

「違うよ! 私は鷹斗のこと好きだもん!」

 思わず勢い良く言ってしまったが、これでは堂々と公開告白しているようなものだ。
 またも周囲の目がこちらに向いたのを感じ、両手で顔を覆いながらさらに肩を縮めた。

「小春。鷹斗は単細胞だから、ちゃんと言ってあげないと分からないと思うよ。僕も相談に乗るし、話してみてよ。好きなのに避ける理由はなに?」

「……だから、それは……」

 二人が食い入るように私を見つめ、堪えきれずに恐る恐る口を開く。

「だって、その……! 最近の鷹斗っ……え、えっちなことばっかりしてくるんだもん……!」

「はぁ!? んなの、付き合ってたら当然のことだろ」

「そうかもしれないけど、そんなすぐに慣れないっていうかっ……二人っきりになるだけでもドキドキするのに、鷹斗はすぐ意地悪するし……っ」

 顔を真っ赤にしながら涙目に訴えると、隣で優斗が大きくため息をつく。

「やだな、これ、何かの罰ゲーム? 僕はてっきり鷹斗がまた小春を怒らせるようなことを言ったのかと思ってたけど……まさかただの痴話喧嘩だなんて、犬も食わないよ」

 半ば呆れ口調で苦笑する優斗に、ますます恥ずかしさが込み上げてくる。
 困った時に頼れるのは幼馴染だけだとついこの場に呼んでしまったのだが、思えば自分たちの実情を知らしめているも同然だ。これでは呆れるのも頷ける。

「まぁ、でも、二人が仲良くやってるみたいで安心したかな。小春、今日のところは可愛い鷹斗に免じて許してあげてよ。こんな素直な鷹斗、初めて見た。もっと不器用な奴だと思ってたけど、小春の前ではちゃんと"彼氏"してるんだね」

「チッ、うるせーな。お前は用済みだってわかったろ、さっさと帰れ」

「言われなくてもそうするよ。これ以上見てられないからね。本当、僕の方が恥ずかしくなってきた」

 やっぱり二人はお似合いだよ、と優斗が優しく微笑んで呟きながら私たちを残して一足先に去っていく。
 妙な静けさと気まずさに包まれて顔を合わせることができない。

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