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もしもシリーズ企画
〜Lost Paradiseより〜
もしも主人公が酔って積極的に誘惑したら…?
※この作品は、本編とは繋がりのない番外編です。キャラ崩壊や仮想設定が苦手な方はお戻りください。「斗真、合格おめでとー! 乾杯!」
理玖くんの大きな掛け声でその宴は始まった。
今日は第一志望の大学に推薦合格が決まった斗真のために理玖くんの呼びかけで久しぶりに全員が顔を揃えた。
何かと忙しい瑛司さんも、フラッとどこかに行ってしまう隼人も、今日ばかりは都合を合わせてくれたようで何だか嬉しくて頬が緩む。
そんな私を横目に斗真も穏やかな表情を浮かべていた。
「ありがとうございます。わざわざすいません、俺なんかのために」
「いや、たまにはこういうのも大事でしょ。最近俺も研究室にこもってばかりだからちょうどいい気分転換になったよ。受験お疲れ、斗真」
瑛司さんは片手に持っていた缶ビールを軽く上げて斗真をねぎらった。
そんな和気あいあいとした空気の中、隼人は相変わらず群れを嫌うように一人ベランダで煙草を吸っている。
彼を見つめる私の視線に気付いた理玖くんはグラスを差し出してそれを遮る。
「伊緒ちゃんもほら、飲んで飲んでー。隼人のことは放っておきなよ。今日の主役は斗真だし」
「あ、うん。そうだね。斗真、合格おめでとう」
受け取ったグラスで乾杯し、甘い香りのするそれに口をつける。
程良いフルーツの酸味が爽やかに喉を潤してくれて、思わず一気に飲み干してしまった。
「……甘い。理玖くん、これ何のジュース? すごく美味しい」
「あー、それ? 伊緒ちゃん意外と飲みっぷりがいいねー」
理玖くんはテヘ、とおどけて笑い答えをはぐらかす。
嫌な予感がしてパッとグラスを離すも、すでにじわじわと身体の内側から熱くなっていくのを感じた。
「まさかっ……」
「大丈夫、大丈夫。一杯くらいいーじゃん。めでたい席なんだし」
「なっ……理玖さん! こいつに酒飲ませたんですか!? 二度と手を出すなってあれほどっ……」
斗真が空になった私のグラスを取り上げて声を荒げたが、理玖くんは悪びれる様子もなくぺろっと舌を出してみせる。
「別にまだ手は出してないけどー?」
「そういう問題じゃないでしょう! 何考えてるんですか!」
「まあまあ」
白熱する理玖くんと斗真の間に瑛司さんが割って入る。
しかし私には三人の声がどんどん遠くに感じて、その後の会話はほとんど耳に入ってこなかった。
まるで目が回ったかのように、視界がぐるぐると歪んでいく―――。
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