▼初めては、冷たい闇 (ヒロト/自慰/閲覧注意)
01/22 10:11(0



―――夜10時。

就寝時間を迎え、自室に戻った僕はパジャマに着替えてから軽いストレッチをしていた。そんなとき、不意に感じた違和感。
……下腹部にじわっと広がって、体中を浸食するような、それ。
その不快感に思わず眉を寄せると、急いで部屋の電気を消してベッドに潜り込んだ。


この感じが、凄く苦手だった。
体を赤子のように丸め早く寝てしまおうときつく目を閉じる。でも寝たいと思えば思うほど視界はクリアになり、益々気になって仕方がない。
うっすらと窮屈さを感じる下着に嫌でも現実を突きつけられたような気がして、僕は強く下唇を噛んだ。

認めたくない、体の異変。
成長したんだと言われたら聞こえはいいが、要は性欲の現れだ。きっかけなんてなくて、こうやって寝る前…1人の時に突然起こる。
初めは違和感だけだったのに、今では治まるのを待つのも一苦労になってしまった。
ひたすら耐えて眠るしか出来ない。何となく解消法は解っているけれど全く良いとは思えなくて、その嫌悪感から僕は最前の選択を選ばずに見て見ないフリをした。



下腹部と同じく苦しくなる息に僕はシーツを掴む手に力を込め、なるだけ別のことを考えようと思考を巡らせていると、1つの情景に行き当たった。

―――ヤバい。
そう思った時には遅く、下腹部を襲うもやもやは更に激しくなって体内でずくんと衝撃を感じた。先程よりも下着の窮屈さが増す。
僕は必死になって別のことを考えようとするのに、決まってある特定のイメージばかりが色濃く現れてしまう。



「………ん、ッ…」

右手が体の中心に近付く。
駄目だ、嫌だと思っているはずなのに動いてしまう手は止まらない。
ゆっくりとズボンの上から触れる。その瞬間にぴくりと揺れる体と、微かに感じた気持ちよさ。その甘い毒に促されるまま、手をゆっくりと揉むように動かした。
次第に忙しくなる動きと、少しずつ強まる感触と電気が走るような快感は確かに僕を解し、苦痛だったもやもやを晴らしていく。




「…あ、は……っ、んん…」

ズボンからの緩い刺激になれてくると体はもっともっとと強い刺激を求めてくる。
初めての快感に支配された僕は、体の求めるままズボンから下着の中へと手を進めた。
既に少し濡れている性器に少しだけ抵抗感を覚えたけれど、ゆっくりと直に触れ、握る。
今までとは格段に違う快感は鮮烈で、確かなそれに程なく手の動きは活発になった。

動かすのに慣れてくると強さやポイントを探り、ただ握ったり動かすだけじゃくて、緩急をつけたり早さを変えたりと変化を出した。
初めての経験の中で自然と出来てしまうことに今となっては驚くこともなく、快感に浸かった頭は既に1つのことしか考えられなくなっていた。

「あっ……ん、ッ……は…」

体が熱を持ち汗をかいている。それでも性器を扱く手の動きは止まらない。
荒い息遣いと時折甘く漏れてしまう声、布団の中から聞こえるにちゃにちゃという粘ついた音。
みんな寝静まったのかすっかり静かな空間で、まるで自分の室内にだけ音が響いているかのように思えて、慌てて歯を噛みしめた。なのに、声と音は止まらない。
せめて、と布団を掴んでいた手を口に持っていき項に噛みついた。快感の中に痛みが増えて、思考もいくらかちゃんとしてくる。




「……はッ、は………あ!んんん!!」

快感の先に何か取っ掛かりが見えた気がした瞬間、一際強い電気が体中に流れて強ばる。
すると性器がどくんと波打ち、粘つくものが手の中に広がった。
一気に疲労感が増し、苦しくなく息と一緒にうすぼんやりとしていた思考は一気にクリアになった。
僕は手の不快感と共に、頭を支配したイメージに驚きと、普通ではあってはならないことをしてしまったんだという恐怖に愕然とした。
早く手を拭いたいとか、忘れてしまいたいとか、どうしようとか、色んなことが頭に浮かんでは消えていく。
一気に冷えていく心と後悔、むさしさは初めての快感を一気に塗り替えてしまった。



そのままじゃいられないから、気怠い体を起こし手を洗って濡れた下着を変えから再びベッドに入った。
ただひたすらに感じた嫌悪感に体を震わせ、整理出来ない気持ちから目尻に浮かんだ涙は嗚咽だけを残して静かに枕に吸い込まれていく。

「…ッ、……く…」

頭を支配した情景。
それは1人の、チームメイトのはずの、彼。
このチームになってから仲良くなり、それは普通の友達で。それが以上になるはずがない相手。
でも、自分の頭の中で妖しく笑い、少し低い声で甘い蜜言を囁いた。いつもボールを追っている赤茶色の目は僕の痴態を映しながら獰猛さを漂わせる。
僕の頭の中の彼は都合が良すぎた。


…そんなこと、あるはずないのに。
浅ましい自分に嫌気が差した。



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