蛍光ペン

大事な所に線を引くように。

大切な所に線を引くように。


蛍光ペンの赤色


「大木ちゃん!現社の教科書貸してくれネ?」

私は、机に次の授業の準備をしていた。
その時に聞き覚えがある声が聞こえてきた。
その声の主は、荒北靖友。
箱学チャリ部の野獣である。

『えー。』

「アァ?!」

『福富くんから借りなよー。』

「福ちゃんに迷惑かけらんねーダロ?」

『私にならいいの?』

「大木ちゃんだからネ。」

『意味わかんない。』

「良いカラ!さっさと貸せヨ!」

『もう!はい!!』

「うんじゃ、終わったら返スー。」

そう言い、荒北くんは去っていきドアのところで「あんがとネ。」と言って去っていった。

荒北くんは、ごくたまーに教科書を私に借りに来る。
仲良しのチャリ部の人に借りればいいのに、何故か私の元へ来ては教科書を掻っ攫っていく。
2年生の時に、同じクラスで仲良くなり、今も尚仲が良い。
女の子で荒北くんと仲が良いのは、私だけじゃないかと錯覚さえするぐらい2年生の時仲が良かったのだ。
というか、福富くんに荒北くんと付き合っているのかと聞かれたことがあった。
もちろん否定した。そんな関係ではない。
でも、3年生のクラス替えで荒北くんとクラスが一緒じゃないことがわかり、ガッカリしたのは記憶に新しい。
心の何処かで、女の子の中では1番になりたいと思っているのは否定出来ない。
ぼんやりと英語の授業を受けて、頭の片隅で荒北くんのことを考えていた。
授業が終わると、荒北くんが来て、教科書を返してくれた。
「助かったヨ。」
と言うと帰ってしまい、午後から使う現代国語の教科書を机にしまい、午前中は寝ることにした。

お昼を食べて、教科書を出す。
授業が始まると指定されたページを開く。
そこには、私が使わないピンク色の蛍光ペンで線が引かれていた。
荒北くんだ。
荒北くんが引いたに違いない。
この野郎。人が貸した人の教科書に。
でも、荒北くんが引いた線は先生が言った部分とは全然違った。
関係のない一文に線が引かれており、意味がわからなかった。


「君が優しくするから、僕はその優しさに甘えるのだ。」


荒北くんに聞こう。
私はそう思い、教科書片手に荒北くんの元に向かった。

2015/05/15


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