TOXIC

「謙也お前見過ぎや。」
「謙也さんほんまキモいっスわ。」

俺はそんなに見ているだろうか。
自覚がなくて、気がついたら見ているのは、もう中毒以上の何物でもない。

TOXIC


「なんや、二人とも後ろから!」
振り返れば、そには財前と白石がおった。
「好きなんはわかるけどな、いくらなんでも見過ぎや。」
白石はそう言い、俺の横に座りよった。
「いくらなんでも気づかれとるんやないっスか?」
と言い、財前は俺の後ろの席に座った。

ほんまに白石の言うとおりかもしれへん。
自分では全く自覚がないが、多分あの日からずっと目で追っている。
遡れば1ヶ月前。
白石と小石川が委員会で居らん日に、金ちゃんがぐずり始め、なんとかしようとしたら走って逃げていってしまった。
そこで俺が金ちゃんを捕まえようと、必死に追いかけていた時に、金ちゃんが衝突した相手が大木さんやった。
俺は、衝突して倒れてしまった大木さんの近くに行き、声をかけたら「忍足くんも大変やね。」と笑顔で返された。
金ちゃんは、大木さんにめっちゃ謝ってて、それを「大丈夫、大丈夫やから!ね!」と、笑顔で対応していた。
そん時の笑顔といったら、そりゃもう可愛すぎて、心臓もたえへんと思った。
いや、むしろ出るかと思ったわ。


「てか、なんで財前がおんねん!」
ここは3年生の教室やで。
なんで、財前がここにおるんや。
「部長に呼ばれたんすわ。ええもん見えるて。」
財前は、白石を指差して言った。
「白石ー。」
俺は白石を睨みつけてやった。
「なんや、謙也があまりにも乙男やもんでなー。」
白石は俺を見て微笑んだ。
なんや、男乙って!
「で、どんなところが好きなんスか?」
「そりゃ、お前な!」
「それ、俺も聞きたいわ。言うてみ?」
「なんで、白石まで…」
俺は2匹の蛇に睨まれたカエルやな。
2人の瞳からは「言わんと喰いつくぞ。」と言わんばかりだ。
「なんや、あの可愛らしい笑顔にえらい優しくて…女の子らしいちゅーか。」
そう言ってるだけでも顔が紅くなるのが自分でもわかった。
そんな俺を面白そうに見る、絶頂同級生白石と生意気後輩財前。
こいつら2人ほんまどっかに行ってしまえ!
「なんや、えらい純粋っスね。」
「純粋の何がいかんのや!」
「おもろないっスわ。」
「おもろなくてええわ!」

ムキになるつもりはないけど、ほんま邪魔せんで欲しい。
今の俺は眺めているだけで充分や。
その先のうんぬんかんぬんなんて、考えられへん。
俺に向けられることのない笑顔だけで、俺は充分満たされてるんや。

「なあ、大木さん。」

大木さんを眺めていたら、そこに白石が見えて、白石が大木さんを呼んどる。
そっからは、会話が聞こえてへんくて、白石が戻って来ると、大木さんが携帯を持って、こっちに来た。
すると、俺の横に来て「忍足くん、アドレス交換しようや。」と笑顔で言われた。
「は?え?」
「今、白石くんから言われて思ったんやけど、同じ文化祭実行委員なのに知らへんのおかしいやんな?」
そう。先日決まった、文化祭実行委員。
大木さんが手を挙げてるのを見て、ついつい挙げてしもうた。
俺、ほんま阿呆や。
白石には、その後えらい茶化された。

「そそそそやな!ちょっと待ってな!」
携帯を鞄から取り出し、赤外線の画面を出して交換。
「ありがとう!いつでも、連絡してやー!」
と大木さんは、短いスカートを揺らして友達の輪の中に帰って行ってしもうた。
正直、もうちょい話したかったのが本音や。
それにしても、アドレスを交換してしもうた…。
嬉しいが、どうしたらいいのかわからへん。
画面に映し出された、大木冥子の文字と携帯番号を見つめることしか出来へんかった。
ぼーっとしてたら、白石と財前がニヤニヤとしているのが横で見えた。
イラつくわー。

「な、な、なんやねん。」

「えらい顔緩んでるで。」
「謙也さんキモいッスわ。」

とりあえず、白石に礼を言おう思ったが、辞めよう。
財前は、今度目の前で有名なメーカーの白玉ぜんざい喰ったろうと心に誓った。


2015/05/11


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