早朝ミッション [高校生/ヒロイン標準語]
電車はほどよく揺れ、眠さをかき立てる。
電車に揺られ毎日登校する私は、いつも教室からテニス部を眺めている。
早朝ミッション電車から降りて、四天宝寺高校を目指す。
3年生になった私は、転校してから2年間ずっと欠かさず続けている「早朝ミッション」は今日も健在だ。
学校の敷地内に入ると、いつも聞こえてくるはずの声が聞こえない。
「あれ?今日は静かだな。」
テニスコートの方に顔を向けると、誰もいなかった。
「今日は休みなんだねー。テスト週間でもないのに珍しい。」
私は、テニスコートから目を離し、下駄箱に向かった。
外履きと履き替え、3階の教室に向かう。
3階の階段は運動不足の私には、キツイものだった。
「(あれ?扉が開いてる?)」
教室の扉が少しだけ空いていた。
「(誰かいるのかな?)」
教室の扉を開けると、そこにはミルクティー色の髪の彼がいた。
「し、白石くん?」
驚きのあまりに私は、どもってしまい、扉の前で立ち尽くしていた。
「ああ大木さんおはよう。」
と言いこちらを向いた。
私は「おはよう。」と言いながら教室に入り、白石くんの座っている窓側の後ろから2番目の席の後ろの席に座った。
「白石くん、席違うよね?」
と私は純粋な質問を投げかけた。
「此処からやと綺麗にテニスコート見えるんやな。」
白石くんは窓の外のテニスコートを見ていた。
「えっ?」
白石くんは私の方に向き直って
「大木さん、毎朝此処から見とるやろ?」
と言った。
心臓が止まるかと思った。
バレていないと思っていたのは、どうやら私だけらしい。
「いつもな、熱い視線感じるんや。」
白石くんは私を見ながら言った。
「せやから、今日は確信を得るために休みにしたんやで。」
と微笑みながら言った。
「ごめん。そういうつもりじゃ…。」
私は伏せ目で言った。恥ずかしくて白石くんを見れない。
「なんで謝るん?」
「えっ?」
私は顔を上げて白石くんを見た。
「これからも熱い視線頼むで!」
「えっう、うん。…うん?」
反射的に返事したために言葉の意味がわからない。
「さてまだまだ時間があるさかい。何しよか?」
笑顔の白石くんはそのまま「なあ、冥子ちゃん?」と私を名前で呼んだ。
いつもと違う日常に脳がついていけない。
2014.01.18
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