籠の中の鳥[高校3年生/千石の片思い]
「じゃあー、今日忘れないでよ!」
「うんうん!わかったよ!君の約束絶対忘れないから!!」
「おい、千石!次、理科室に移動だぞ。行くぞー!」
「待ってよー南ー!」
俺は理科の教科書と筆箱を急いで持って、南と教室を出た。
女の子はみーんな大好き!!!
今日も俺はラッキー!!
クラス1の美人さんに声かけられちゃったもんねー!!
俺と一緒に帰りたいんだって!!
「千石。今日の部活は試合形式で進めるぞ。」
「ラッキー!そんな気分だったっんだよね!」
「試合をしている時、本当に楽しそうだもんな。」
「だって、女の子が見てるからね!」
俺はウキウキな気持ちを抑えれなかった。
試合形式とくれば、女の子のギャラリーがいっぱい来る。
ちょーウキウキ!
「あー可愛い子が前から沢山!」
「お前は…全く…」
「ねえねえ!南はどんな子がタイプ?!」
「えっ俺は…」
…あ、
「ねえ南?」
「うん?どうした?」
「俺、好きな子出来ちゃったかも。」
開いた口が塞がらなかった。
俺の横をセミロングで黒髪の女の子が笑顔で友達と話しながら通った。
その笑顔があまりに可愛く、俺の視覚を奪った。
「はあ?!」
「今の子見た?!」
「はあ?!」
「ほら、南!振り返って!あの子!セミロングの黒髪の子!」
「うん?」
南は俺に言われるがままに振り返った。
そして、南は納得した顔で俺に言った。
「ああ4組の大木 冥子さん?」
「えっ?!なんで南知ってんの?!」
「去年、一緒のクラスだったんだよ。」
南は笑いながら俺に言った。
「なんで教えてくれなかったのさー!」
「そそそんなん知るかよ!だいたい千石は誰でもいいんだろ?!」
南は俺に呆れたように言った。
そうか"誰でもいい"か。
「…今回はスイッチ入っちゃったかも。」
「はあ…。」
南は呆れてるようだったけど、俺の中ではスイッチがONに切り替わった。
今日は一日が長く感じた。
理科の授業なんて耳にも入らなかった。
気がつけばさっきの大木さんの笑顔が離れない。
決して、俺に対してではなかったけど、その笑顔が欲しいと思った。
「さよーならー。」
気がつけば終礼は終わって、部活の時間。
「おい、千石。行くぞ。」
今日は南に急かされてばかりだな。ああ…なんてアンラッキー…。
「ああ南、先に行っててくれないかな?始まる時間までには行くから!」
南は頭上にハテナマークを浮かべていたが「早めに来いよ。」とだけ言いテニスバックを持って教室を出て行った。
俺はそれを見送ったあと、テニスバックを持って4組に向かった。
もちろん大木さんに会いに行くため。
4組を覗くとそこには大木さんが、教室の1番後ろの席で外を眺めていた。
その姿でさえも俺にとっては絵になった。
「大木さん!」
俺が声を教室の後ろの扉から声を掛けると、大木さんは勢いよくこちらを向いた。
「はい?なんですか?」
こちらを見て驚いた様子で答えた。
俺は教室に入り、大木さんの方に足を進めた。
「俺は2組の千石清純。」
「どうも。初めまして。」
「前座ってもいいかな?」
「どうぞ。」
俺は大木さんの前の席に腰を下ろした。
正面から見る大木さんは黒髪が艶やかで、黒い瞳が俺のオレンジ色の髪を写し出していた。
「俺、大木さんのこと好きになっちゃんだよねー。」
すると目の前の大木さんは目を大きく開け、驚いた顔で俺を見た。
「はあ?」
「だから、まず携番教えてくれないかな?」
俺は携帯をポケットから出し、大木さんの前に出した。
でも、大木さんは携帯を出そうとせずに、顔を曇らせた。
「悪いけど私、君と遊んでる暇ないんだよね。」
そう言うと、大木さんは机にかけてあった鞄を取り、立ち上がった。「あれ?」って
俺がいうと、大木さんは教室のドアに歩いて行った。
「私はテニス部で言うと、南くんみたいな人が好きなんだよね。」
そう言い教室を出て行った。
取り残された俺は、呆気に取られた。
もしかして、初めてフラれた?
しかも、南みたいのがタイプ?
俺、今日アンラッキー過ぎるでしょ!
でも
「そんな冷たい視線も俺は大好き。」
俺は机に頬をくっつけて誓った。
「絶対に俺を好きになってもらうから。」
君に捕まった俺は…
籠の中の鳥今日は南と試合してやる!!!!!
それにしても…俺なんか忘れてる気がするんだけどなー…
2014.01.11
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