――これは、なんだ?
「わぁあ! もうこんな時間! 遅刻だ遅刻!!」
 この声は、
「ここじゃみんな、いかれちゃってるのさ」
 この記憶は、
「ようこそ、ワンダーランドへ。さあ! パーティーの始まりだ!!」
 一体、なんなんだ?
「お前はここにいちゃいけない」
 私は、
「愛してる。スペードの女王」
 私は――
「その女の首をはねなさい」
 私、は……?



























 ――――君の名前はアリス。


君はこの狂った(おかしな)世界に
迷い込んできた人間さ



    それで


 君は死んだ。


ハートの女王の
手によってね。



ああ、可哀想なアリス。
君の瞳はどこへ行ったのかな?



しなやかな髪は、 筋の通った鼻は、



  林檎色の唇は、どこへ行ってしまったのかな?


ああ、アリス。
今の君は
完全なアリスじゃない。



聞こえるかい、アリス  



   君はまだ死んではいけない。
だって 詰まらないじゃないか
そんなもの 



 アリス、
君もこれからワンダーランドの正式な住人になるんだ。


     嬉しいだろ?


君もこれで立派な俺達の仲間さ。



  君に、命の息吹を。


アリス、よく聞くんだ。
まず君は、体を起こして
この屍の海から出なくちゃならない。



出口はすぐに見つかるよ。

だって君は賢いから。



   ……あ。頭があった頃はね。


それでその後、
君はひたすら下に
潜るんだ




そうすれば空に辿り着くよ。
そこから先は ひたすら真っ直ぐ



多分、途中でヘンテコな双子に
  出会うと思うから

  君は黙ってついていけばいい。


……ああ、そっか  君は口がなければ
         声もなかったね。


んー、困ったなぁ……



    じゃあ仕方ない。


  君の口の代わりに言葉(意思)を伝える  魔法をかけてあげよう。


どんな魔法か、は……
お楽しみ、ね!




……さて、どうやらあまり時間はないようだ。



  アリス、  とにかく後は真っ直ぐ進め


暗い森の奥で迷子になるんだ。

そうすりゃ
陽気で陰気な音楽が聞こえてくるから



その音楽を辿っていきな。


マッドハッターっていうイカレ帽子屋が



君を助けてくれる。



そこまでいけば一安心だ  



あとはダイヤの女王に会って
それから――    



  そこから先は、自由だ。


さあ、アリス、


  目をあけて。



その、失った目を……



意識(め)を  覚ますんだ。




    おはよう、アリス。


はじめまして―― 



首なしアリス。


……ハートの女王には気をつけてね。




…………――――――――






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