02 僕は君を気に入った 昼休みに教室から出て、購買でも行こうかなんて考えてたら顔の真横を何かが凄い勢いで通り過ぎた。 それが教室にあるごく普通の机だと認識。こんなものをあんな豪速球で投げる奴なんて俺の知ってる中じゃアイツ以外にはいない。 振り向くと、案の定 臨「…シズちゃん」 静「いざやくんよぉ。なんでてめぇはここにいんだ。殺されてえのか。ああ、そうかじゃあ殺す。今すぐ殺す。殺す殺す殺す…」 臨「なんでってそりゃあ、ここ学校だからね」 シズちゃんは全くもって聞く耳を持たない。これだから嫌いなんだ化け物め。 そのまま俺は屋上に続く階段をかけのぼり、シズちゃんがまだ追いついてないのを確認しつつドアを開ける。 そこにはあまり見慣れない子が佇んでた。教室に戻ろうとしたのか。 静「いぃぃざぁぁああやああああ!!」 後ろを見るとシズちゃんがゴミ箱を投げてきた。この子の事は目に入ってないようだ。 このまま俺だけ避けたらこの子にゴミ箱は直撃する。 まあ、それでずっとシズちゃんが罪悪感を抱えて苦しむっていうのも悪くないけど関係無いこの子を巻き込むのもちょっとね。 仕方ないこの子を助けるか、と思って手を伸ばした。 腕を掴むか掴まないかの所で視界から女の子が消えた。 必死に目で追いかけると、その子はフェンスの上に着地してこちらを見た。 あまり運動が出来なそうな子が、シズちゃんの投げたゴミ箱を避けたのだ。 その子を見ると、俺とシズちゃんを見てるようだった。だけど、少し俯きがちで目は合わない。 そのうちその子はフェンスから飛び降りると、俺等に会釈をしてドアへと向かって行った。 …少し意地悪をしようかな。 その子の前に俺は立ちはだかる。 さて、どんな反応をしてくれるかな。俺の予想としては…そうだな。困った顔をするか、泣き出すか。それとも怒り出すのか。 相変わらずの俯きがちで表情をうまく読み取れない。 少し意地悪しすぎたのか、その子はくるりと方向転換をしてフェンスに向かって走って行った。 臨「…え?」 彼女は、フェンスを飛び越えて下へと落ちて行った。 静「お、おい」 シズちゃんが慌ててフェンスに近寄って下を覗く。 俺もフェンスに近付く。もうその子は地面にいて普通に歩いて行く所だった。 彼女は俺の予想を遥かに上回る行動をしたのだ。だから人間は面白い。愛おしいね。 あの子について少し調べてみよう。 俺は君を気に入ったよ。 [しおり/戻る] |