化け物×化け物 | ナノ




20 幸せな照れパシー


重く暗い雰囲気をぶち壊してドタバタドタバタと廊下を走ってドアを乱雑に開け放ったのは、新羅が愛して止まないセルティだった。

セ【なmだ?!何ごとだ襲撃か!?的か!!?なんだ何がおこってえうbだ!!!!】

何をそんな焦っているのか漢字の変換ミスや、打ち損じが多々見受けられる。

新「セルティ落ち着いて!!どうしたの?」

セルティは無い顔をキョロキョロと見回したりと、相当な挙動不審ぶりだ。

振り返り名前が寝ている寝室に駆け込んで行く。

新「セルティ!?どうしたのさ」

新羅と静雄もセルティの後に続いて寝室へと入る。

セルティは名前の寝ているベットの前に立ち何やら観察している様子だった。

セ【新羅、この子は人間か?】

静雄と新羅はなんと答えていいやら分からず固まってしまう。

静「人間、だ。」

新「うん…」

セ【そ、そうだよな…】

3人は名前を見つめたまま動けないで立ち尽くす。




『んうぅ…』

名前が呻き声を上げて身じろぐ。

静「名前!!!」

静雄が名前に駆け寄り顔を覗き込む。

『ん…ぁ…れ?静雄さん?』

新「良かった目が覚めたんだね」

静「大丈夫か??」

『大丈夫…痛…!!!』

上体を起こそうとして、腹部に激痛が走り顔を歪める。

新「動かないで!暫くは安静にしていた方が良いよ」

『そうですか…』




重い空気が漂う。

セ【君は、何者だい?】

沈黙を破ったのはセルティだった。
実際に言葉を発した訳では無いから沈黙を破った訳では無い。

『私…ですか?』

名前はゆっくりと慎重に上体を起こす。

セ【そうだ】

『え、えと、苗字名前と申します』

そういうことではない、とこの一室にいる誰しもが思ったことだろう。
自己紹介をした本人でさえそう思ったのだから。

『それより、何故Padを使ってるんですか?』

彼女は純粋に自分の疑問を口にしただけだった。

セルティは新羅を見る。
フルフェイスのヘルメットを外して理由を述べるべきか悩んでいるのだろう。

セ【悲鳴をあげない?】

『?はい』

セルティはヘルメットを取り外す。
普通そこにあるはずの顔は無く、ただ向う側の壁が見えるだけだった。

『あれ?頭が無い』

セ【そういうことだ】

『そうなんですか。でも、何故Pad?』

その場の誰もが首を傾げる。

セ【口が、というか顔が無いから喋れないんだ。】

『え?喋れない…?え?』

混乱し出す名前。
何事かと頭の上に疑問符を浮かべる3人。

『聞こえて、ますよ?』



目を見開く二人。Padを落とすセルティ。

セルティが名前の肩を掴む。

セ(聞こえるか!?聞こえるのか!!?)

『えっと…えー』

(こう、かな?聞こえますよ!聞こえてますか?)

セ(す、凄い…こんなこと初めてだ)

(私もです!!)

新「えっとー、何してんの?」

セルティが落ちたPadを拾って文字を打つ。

セ【凄いぞ!!!この子と会話ができる!!革命だ!私は今世界で一番幸せに満ち溢れているぞ!!!】

静「そうなのか?名前」

『あ、はい。そうみたいです!』

セルティは相変わらず狂喜乱舞している。







新「つまり…名前ちゃんとセルティはテレパシーみたいなもので会話が出来る、と?」

やっとセルティが落ち着きを取り戻した所で新羅が話をまとめる。

『はい!』

新「羨ましい!!羨ましすぎるよ名前ちゃん!セルティの声を聞いて良いのは僕だけだ!セルティ、さあ、僕と今からテレパシーの修行をしよぐぉっ」

ははは、と名前は乾いた笑いで新羅の言葉を受け流す。

セルティは新羅を影で刺す。

セ【でも、何故名前は私の声が聞こえるんだ?一体名前ちゃんは何者なんだい?】

『それは…』

名前はふぅっと一息つき、決心したようにセルティ、新羅を順番に見て最後に静雄をしっかりと見据える。

『今から話す事、信じなくても良いです。でも聞いてほしいことがあるんです』




『私は、人間とメデューサのハーフです。ただメデューサの血が色濃く出ていて特殊な能力が私には昔からあります。それは、恐怖や殺意など負の感情で人の目を見るとその人を石にしてしまうというもので…その、石にししまう時間は感情の強弱によります。強い殺意を持つと……殺してしまいます。』

セ【なるほどな】

『今まで隠しててごめんなさい。もしかしたら危害を加えてしまうかもしれないのに、何もっ何も言わずに…』

名前はただただ涙を流した。ごめんなさい、と呟きながら。

静「言ってくれてありがとな。」

『静雄さんっ…』

静「名前は、名前だ。メデューサだか人間だか能力だか知らねえが俺の知ってる名前は誰よりも優しくて誰よりも人想いで誰よりも純粋な奴だ。」

『うぅ…静雄さん、ありがとっござ、ますっ』

新「頭部、即ち目の無いセルティと。目が合うと石にしていまうメデューサの混血名前ちゃんか。確かに相性いいのかもね」

セ【お前もそう思うか!!!】

セルティは名前の手を自分の手で握る。

セ(名前、出会えて良かった。友達にならないか。)

(え!いいんですか!喜んで!お友達になりましょう)

セ(ああ、よろしくな。あ、自己紹介まだだったな。今更だが、私はセルティ・ストゥルルソンだ。セルティと呼んでくれ)

(はい。わかりました、セルティさん!)

セ(困った事があったらすぐに私に言うんだぞ。私は名前の力になりたい)

(セルティさん…!私、嬉しいです!セルティさんの事大好きです)

セ(そんなっ照れるじゃないか!!!嬉しいぞ。私も名前が大好きだ)

『ふふふっ』

突然笑い出した2人をみて、ポカンとする新羅と静雄。

新「何!!何を話してたの!!!気になるよ!!!」

セ【私と名前だけの秘密話だ】

『はいっ!お友達になりました』

それからずっとセルティと名前は話していたという。
側から見ると、無言の空間。

けれどもセルティと名前は幸せな時間を共有したのだった。




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