※22巻内容についての話ですので未読/ネタバレ地雷の方回避お願いします
※DXがお兄ちゃんしてる。
※兄妹いちゃラブ+友情







少女はくたりと頭を垂れる。見慣れた稲穂のような鮮やかな金色が頬を包み、その瞳を見せはしなかった。

「………」

DXは頬を掻いた。一通りの話は終わったが気落ちしたままの妹にかける言葉が見当たらない。
普段であれば六甲にフォローを回すのだがその頼みの綱は不在だ。ちなみにそれは彼の口が達者という訳ではなく、しどろもどろながら真摯で誠実な言葉はイオンの心にまっすぐに届くし、また、そんな困り果てた彼はイオンの「六甲が困るからうじうじ悩むのはやめよう」という切り替えと気晴らしに丁度良いいのだ。

「…イオン」

はぁ、と溜め息を吐くとDXは妹の名を呼んだ。ぴくりと肩を動かしてのそりと頭を上げる彼女の瞳にはありありと自責の色が浮かんでいる。
正座をして叱られるのを待つイオンにDXはちょいちょいと手招きをする。
ずりりと膝を擦りDXの正面近く、あと30cmもないようなところまで来た少女にもっともっとと手招いた。イオンとDXは喋らない。それを見守るフィルやリドと言った面々も黙っているので辺りには微妙な沈黙が漂っている。

イオンの膝と胡座をかいているDXの爪先がくっつくほどの接近があって、漸くDXが動いた。
右腕が伸ばされ、俯いたイオンの頬にかかる髪の毛に触れる。少女はぱちりと黄金の瞳が瞬いて顔を上げると同時にその指先にこめかみから髪を掬われ、後ろ頭まで梳き流された。

「イオン」

優しい声音が少女を呼ぶ。
菫色の瞳がじわりと細められ、少女の頭を導きながら己も前傾して肩口に黄金色の頭を寄せた。

「誰も、悪くなんかないんだ」

DXの淡い蜂蜜色の髪の毛がイオンの髪の上にぱさりと広がる。ぽんぽんとDXは妹の頭を優しく撫でるともう一方の手を背中に回した。

「俺も、お前も、フィルもライナスもルーディーも、それにロビンも、誰だって悪いことなんかしてない。タイミングが悪かった。運が、悪かった。言うなればそんなもんだ。
誰も、こんなことになるとは思っていなかった。だから、お前が責任を感じることなんてない」
「…でも、だって、」

DXに引かれるまま身を寄せてイオンはぎゅっと兄の服を掴む。
震える肩を撫でながら、譫言のような逆接をDXは遮った。

「イオン。お前は、こんなことになるとわかっていたらロビンの父親探しをしなかったか?
違うだろう?俺も、お前も、探しただろう?俺達の大切な友達――ロビンと、イゼットの為に。
同じように、ライナス達が手を貸してくれたのはイオンと友達だから。イオンだって彼らが困っていたら助けるだろう?それで怪我をしたからってお前なら後悔するか?」

子供を宥める声音でDXが問い掛けるとイオンは肩口で小さく首を振る。
それに微笑んでイオンを膝に引き上げる。イオンはDXの胡座の上で横座りになり体を捻って肩に額を押し付けている状態だ。ぎゅうと背中に腕を回して抱き締めるとおずおずとイオンの腕もDXの背中に回る。

「今回は予想外の出来事だったけど、誰も死んでない。死んだら次はない。怪我はしたけど、皆、生きてる。結果論だけど、それでいいんだ。反省は必要だけど、お前ひとりが気負うことなんてない。
だから、逃げるな。自分を責めるのはなによりも楽だろう。でもそれで傷付く人もいることを、忘れるな」

覚悟を決めろ、とDXは言う。
イオンの腕に力が込められる。「うん」と小さいけれどしっかりとした返事を聞いて、DXは妹の頬に手を掛けると顔をあげさせた。
半泣きのそれを、袖でぐしぐしと拭う。目尻が赤くなってしまったがそれもご愛敬ということで、DXは妹に微笑みかけた。

「じゃあ、どうすればいいか、分かるよな?」
「うん」

ぐりぐりと頭を撫でられながらイオンは簡潔に返事を返した。そしてくるりと同席しているフィル、リド、ルーディーにティティを見渡した。

「皆、迷惑かけてごめんね。手伝ってくれてありがとう。もう次はこんなことないように、私ももっと気を付ける。
だから、…もうちょっと、手伝ってくれる…?」

嫌わないで。とでも言おうとしたのかも知れない。一瞬の間は彼女にどんな躊躇を持たせたのか。
けれどそれを口に出すのはあまりにも不躾だ。そんなもので傷が入る絆など培ってはいない。
今までの交流はより深く濃いものだった。
だからこそ、イオンは助力を願った。
それが関わってしまった彼らの身の安全を図るものであり、確認してもしもついてこられないと返事があるならば父の名前の力を使ってさえ彼らを守る決意の現れでもある。

「い、いいって。好きで協力したんだし、怪我だって俺達の不注意でもあるんだ。寧ろ、心配かけちゃってごめんな」
「そうだよ!それに、怪我をしたのがイオンちゃんじゃなくて良かった!
ライナスにフィルは男なんだから、ちょっとの傷なんて大したことないよ」

狼狽えたフィルに、ルーディーはあっけらかんと笑う。「お前が言うな」とフィルに小突かれてルーディーはてへっと舌を出した。
イオンはふたりのその態度に毒気が抜かれたように肩から力を抜いた。ほっと表情が緩む。

「ありがとう。フィル、ルーディー」
「俺からも。怪我させてごめん。力を貸してくれてありがとう」

イオンを膝に抱っこしたままDXは頭を下げる。結構笑える姿だったが、イオンが安堵と共に兄にぎゅうぎゅうとしがみつく力を強くしたのだから動けずそのままなのは仕方がないことだ。

「うん」

ティティはふふふと笑った。
この兄妹の仲の良さは見ていて微笑ましい。端から見たら恥ずかしいけれど。
しかしそれに待ったをかけるものがいた。

「待て、DX」

キリリと顔を引き締めたリドがそれを制す。きょとんと目を瞬かせる兄妹にリドははっきりと告げた。

「さっきイオンと友達だからと言ったが、ひとつ訂正だ。
イオンと、DXと友達だから。だから、皆、手を貸したんだ。君達の助けになる為に」

それにぎゃあと叫びを上げそうになったところをすんでで止めたのは誰とは言わない。
DXはまたぱちりと瞬いた。そしてリドから視線を外し隣に向ける。
まさかの矛先からつつかれた藪蛇爆撃にフィルはへの口を硬直させ、ぶわわと顔を赤らめた。
ルーディーはぴくりと肩を震わせたが否定する程でもないのかへらと笑う。

「あっはっは。そうだね、DXとイオンちゃんと友達だから手を貸そうとしたんだよね!」

ブッフォと吹き出したティティがそう言って腹を抱えた。
ルーディーもライナスの回りくどい友情宣言を思い出してじわじわと笑いの波が訪れる。
リドに至っては訂正できたことが嬉しかったらしくにこにこと誇らしげに微笑んでいて、天然とはげに恐ろしきかな、とフィルに思われていたとは露知れず。
きょとんと面々を見渡していたDXは彼らのそれぞれらしい反応にへにゃりと頬を緩ませた。

「………うん、ありがとう」

その横でいつもの調子を取り戻したイオンも同調し、「ありがとう!」と輝く笑顔を添えた。
良い友達を持ったね。














藪をつつけば愛が出る

きみたちのことが大好きです











130626

六甲がいないのでフォローとかがんばるDXが見たかった…。
カッとなってやった。
いちゃラブ兄妹いいと思います。
普段はイオンからくっつくけど、慰めたい励ましたい、そんな時こそDXにくっついていかないイオンにやきもきするDXとか萌える。
腕を広げて「おいで」とかいってくれよおおおおお!

「いっぱいしゃべって疲れた」とか言って、ぎゅうぎゅう抱き着いてくるイオンにぐたーと寄りかかったりして「潰れる!おにい、潰れる!」「疲れたー」とかそんな問答してたら!いいと…!


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