※六Dちゅっちゅ
※珍しくイチャラブ






小皿のピーナッツはもう数えるばかりで床にはごろごろと酒瓶が転がっていた。
2階の、月当たりが良い一室のバルコニーのすぐ近くまでソファを引き摺って六甲と並んで座っている――否、いたというべきか。DXは今や全身から力を抜いてソファに体を預けている。ぐったりとかだらーんといった効果音が良く似合う程の脱力振りだった。

「ろっこうは、さけにつよいよなぁ」

アルコールで紅潮した頬を背凭れに預けて隣に座る六甲に視線を向けたDXは本格的に酔っているようで言葉が幼い。イオンが乙女の集いという名のお泊まり会でいないからという理由で心置きなく実行された兄弟ふたりの酒盛りは既に2時間は経過していたものだから、それも仕方がないというものだろう。
けれどそれなりの量を飲んでいる筈の六甲が殆んど素面のままなのがDXには不思議、というか納得がいかないらしい。DXだって一般的に言えば強い方なのだから尚更。
拗ねた表情を溢す主人に六甲は手の内で酒瓶を転がしながら困ったように笑った。

「忍者、ですから。小さい頃から酒に体を慣れさせているので」
「むぅ、それは何度も聞いた」

過去に何度も繰り返した問答にDXは唇を尖らせる。更には「六甲が酔ったところが見てみたいのに」とまで言ってのけた彼は六甲の肩に己の頭を預け、ぐりぐりと押し付けた。
蜂蜜色の髪の毛は見た目通り細く柔らかい。それが頬や首筋をくすぐってこそばゆい。

「六甲はなんで酔わないの、」

まるで責めるような口振りは理不尽の塊で、瞳は不確かに揺れるのに手放さない酒を口許に運ぶ主人に六甲はまたひとつ、小さく苦笑を溢した。

「俺も酔っていますよ」
「どこがだよ」

六甲の宥めるような声音にDXはきゅぽんと瓶から口を放しつつ胡乱気に問う。六甲の顔は多少の紅潮を見せるものの視線も呂律もしっかりしているので、酔っていると言われても信じられない。
間近で見上げてくる菫色が月明かりに照らされて濃淡を描く。普段眠たげな睫毛に隠れたこのアメジストの鮮やかさは思わず目を引かれるものだった。

「酔ってます――こんなことをしたくなるくらいには」

すぐ近くにあるその顔に、六甲も己の顔を寄せた。先程酒瓶をあおった時に口端から溢れた酒を舐める。
きょとんと目を見開くDXに六甲は全表情筋を駆使して笑い掛けた。それが彼にできる最大の照れ隠しのつもりだったが、いろいろと飲み込んだDXには最後の一押しとなって今あった出来事が現実であると知らしめる。

「…………う、あ!」

思考回路がショート寸前で、DXは頬が急激に熱くなるのを自覚しながら呻いた。不意打ちだ。
六甲が照れながらニコニコと笑いかけてくれてる現状全てが夢かと疑いたくなるが、でも唇に感じた感触は本物だった。

「このヘタレめ…!」

流石にDXも真っ正面から恋人を見ていられなくて、でも普段自分からそんなことをしてくれない六甲が嬉しくて、思わずそんな憎まれ口を叩く。間髪入れず重ねられた謝罪がまたなんとも言えず、DXはまた六甲の肩に額を押し付けて呻いた。

「…六甲のばーか」

そんな言葉ほど声に険はない。それどころか肩口は熱く、照れ隠しというよりは甘えていると言うに近い動作で髪の毛を擦り付ける。
先程己から唇を寄せたりしたものの、こういった接触に慣れていない六甲は地味に狼狽えた。

「………なぁ、六甲」
「う、あ、はい」

なんとなくいつもより艶のある声で呼び掛けられ六甲はしどろもどろながら返事を返す。小さな笑みが耳元で響き、首にするりとDXの腕が回された。

「あ、ああああの、DX、さま、」

半身を乗り上げるようにして正面から抱き付く。たったそれだけなのに六甲の思考は混乱に陥り、あたふたと周りを見渡して、逡巡の後にぷいとDXと反対の方向を向いた。

「さっきの、もっかい」

ゴーグルをつけていない垂れ気味の黒目がきょろきょろと行き交うのを、頬に手を当て強制的にDXの方に向かせながらもういっかい、と酒に溺れた甘い声で繰り返す。

「でぃ、DXさま…!」

にや、と笑ったDXが六甲と額を合わせ、吐息を交わし合う距離で止まる。
あと少しで唇が触れる、のに。

「六甲、こっち見て」
「…む、無理です」

すっかり酔いも醒めてしまって羞恥が募る。DXを直視出来なくてぎゅうと目を瞑る。
温かなてのひらを払い除けることなど六甲にできやしないのだ。
こうなった六甲は頑固だ。甘えた声を上げてみても頑なな様子は崩れもしない。
仕方がない、と溜め息をひとつ。

「…まぁ、いっか」

殆んど初めてと言っていいだろう六甲からのキスに浮かれていた。
だからより、こうして顔を合わせて貰えないのがつらい。いじめすぎてしまったようだ。
固く瞳を閉ざす六甲の、その唇にちゅっと音を立てて自分のそれを合わせる。

「好きだよ、六甲」

かぁっと頬を紅潮させる六甲に囁き、もう一度、今度は額に落とす。
半分乗り上げていた六甲から退いてソファに座り直し、DXはそっと六甲の肩に頬を預け寄りかかる。
羞恥と困惑と、照れと安堵が六甲に広がるのを感じながらその手を取った。指と指を絡め合う。
顔は見えないけれど、体温を感じる距離。

「六甲」

呼べば、はい、と律儀な返事。そして、彼の指にきゅっと力が入る。

「また今度、な」
「………善処します」

苦味の滲むその答えにDXは小さく吹き出した。
律儀な六甲は大いに悩み、また、律儀に実行してくれるだろう。
また酒の力を借りても良いから、もう一度、君から。












もう一度、何度でも

傍にいるよりもっと近くに














130503

ということで久々の更新です
一応予告に間に合ったー!

親と魚市場行ってその道中に大幅変更しました。
本当はもっと長くて途中の六甲のところでDXがしょぼんとして、最後の方の展開はまぁ同じなんだけど嫌いにならないでねグスンっていうスタンスでしたっ!
慌てた六甲が「失礼しますっ!」てぶちゅーってするのもいいなぁと思ってましたがいかんせんDXが落ち込みすぎてなんかさっぱりしない話になっちゃいましてね!どーん!

最近ね!ネタがね!思い付かないんだ!もろもろ!掃除が終わらない!


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