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8月も終盤に差し掛かり、夏休みも残り僅か。
しかし、社会人にはあまり関係がなかったりもする。
むしろ職業によってはこれから遅い連休をとる人も多いのではないだろうか。
聖羅もここにきてようやく数日間だけ休みがとれたところだった。

「鉄の塊が宙に浮くなんて」とビクビクしながら飛行機に乗り、東京へ。
浅草寺などの観光名所に立ち寄りつつ、今日は新宿にやって来ていた。

「ごめん、十時までには戻るから」

一緒に旅行に来ていた友人は、そう言って地元の知り合いに会うために出掛けてしまった。
まあ、こんな機会でもなければしょっちゅう訪問出来る距離ではないので、仕方がないことではある。
彼女と別れた聖羅は、とりあえず夕食を食べに行こうと考えてホテルの部屋を出たのだが──。

「──あれ?」

慌てて鞄を探る。
しかし、そこにあるはずの鍵はやはり見つからない。

「う、嘘っ……どうしよう……!」

どうやら部屋の中に忘れてきてしまったようだ。
すっかり狼狽えてしまった聖羅は、その場で少しの間おろおろした末に、結局フロントまで戻ることにした。
スタッフに事情を説明し、宿泊客であることの証明に身分証を提示する。

「それでは、係の者を向かわせますので、お部屋の前でお待ち下さい」

よくあることなのか、そう説明してくれたスタッフの笑顔は優しかった。
それでも恥ずかしいことにかわりはない。
スペアキーを貸し出すのではなく、客室係がドアを開けにきてくれるということで、聖羅は羞恥で消えてしまいたくなりながらも礼を述べて部屋の前に戻っていった。



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