聖羅は狩りに出かけていた。 と言っても、現実の話ではない。 ゲームの中でのことだ。 聖羅が今遊んでいるのは、魔物を退治して金や食料を得ることでレベルアップするゲーム、『魔物ハンター』。 略して『まもはん』。 聖羅の分身は、片手剣を携えた女ハンターだった。 プレイヤーキャラはかなり細かい部分までカスタマイズが可能で、なるべく自分そっくりになるようにカスタマイズしてある為、自然と思い入れも強くなる。 「今日はちょっと上のレベルに行ってみようかな」 聖羅の操作するプレイヤーキャラは、山間部にある深い森へと赴いた。 数百を越える種類がいる魔獣にはそれぞれ強さのレベルがあり、初心者向けから上級者向けまで様々だ。 このエリアには、少々レベルの高い魔獣が多く生息していた。 魔獣を倒した時に入手するパラメータアップ用の肉は、やはり強さによって上下するのだが、当然、強い魔獣を倒したほうが早くプレイヤーキャラを強化出来るのだ。 聖羅の現在のレベルではかなり苦労すると思われるが、聖羅にこのゲームを紹介した親戚の少女は、とっくにもっと強い魔獣のいるエリアに出入りしているので、何とか早く追いつきたいという思いからの行動だった。 その親戚の少女はもっぱら調理や補助を専門としており、パートナーの男性がニ丁拳銃で倒したデカい魔獣を調理しては、彼にせっせと食べさせて能力アップに努めている。 彼女はもはや神がかり的な領域まで料理スキルを上げており、シェフとして他のプレイヤーから引く手あまたなのだが、誰かから一緒に狩りに行かないかと勧誘される度に、パートナーの男性が追い払っているのだという。 勿論、一流のハンターと呼ばれる以上、彼女自身の戦闘能力もそれなりに高い。 小柄な少女の姿をしたキャラが、中型の魔獣を愛用の布団叩きでぶちのめして、その場でご飯を作り始める様子は、ちょっと背筋が寒くなるような光景だった。 |