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「うわあ…やっぱり厳しいなあ……誰か誘えば良かった」

森の中、早くも手強い魔獣に出くわして容赦なくボロボロにされた聖羅は、狩りに出向いたはずが、追いかけてくる魔獣から逃げ回るはめになっていた。
画面の中で動き回る大型の魔獣の攻撃を避けて逃げると、その度にカメラも動き、視界がグラグラした。
臨場感があって良いのだが、長時間プレイし続けたら3D酔いになりそうなシロモノである。
体力は底を尽き、後一撃でも攻撃されてしまえば戦闘不能になることは間違いない。
これでは無事に町まで戻れるかどうか──。

「あっ!」

しまった。
逃げ回る内に崖下の袋小路に追い込まれ、退路を塞がれてしまった。
これでは逃げられない。
巨大な魔獣が大きな足を振り上げる。
──踏み潰される!
覚悟を決めた聖羅を、しかし、次の瞬間、横から誰かが助けてくれた。
画面にメッセージウィンドウが出現し、

「大丈夫ですか?加勢しましょう」

との通信メッセージが表示される。
魔獣の前に立ちはだかったのは、黒い帽子を被り、黒衣の裾をなびかせた男性ハンター。
彼は赤い剣を構えると、そのまま魔獣に斬りかかっていった。



焚き火の中で赤い炎がはぜる。

「有難うございます、本当に助かりました」

「どういたしまして。困った時にはお互い様ですよ」

焚き火を挟んで男性ハンターと向き合って座った聖羅のキャラは、はふはふと焼きたての肉を食べていた。
さっきの魔獣の肉である。
ピンチに駆けつけてくれたその男性ハンターは相当強いキャラだったらしく、あっという間に魔獣を倒してしまったばかりか、倒した魔獣をその場で調理し、聖羅を回復してくれたのだった。

「ただ、一人であまりレベルの高いエリアには行かないほうが良い。この辺りでは初心者グループがよく全滅したりしていますからね」

「そうなんですか…」

そこまで危険な場所だったとは知らなかった。
レベルアップを焦るあまり、かなり無茶な真似をしてしまったようだ。

「貴女さえ良ければ、このまま一緒に行動しませんか?今後も、都合が合えばいつでも呼び出して頂いて構いませんよ」

「えっ!?いいんですか?有難うございます!助かります!!」

なんていい人なんだろう。
聖羅は感激し、今後パートナーとして一緒に行動する約束を交わした。



「──ちょっと赤屍、
何やってんのよ」

「ゲームですが」

「………………」

馬車が運転するトラックの中で、おもむろにポータブルゲーム機を取り出したかと思うと、カチカチと操作し始めた赤屍蔵人を、卑弥呼は半眼で睨んだ。

「まだ仕事中でしょ!」

「依頼品は運び終えたではありませんか。私の仕事は終わりました。後は好きにさせて貰いますよ」

「あんたねぇ… 」

「この後、パートナーと会う事になっているんです。いま待ち合わせ場所の確認をしているんですから邪魔しないで下さい」

「………………」

おうちに帰るまでが遠足です。という言葉を思い出した卑弥呼だった。



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