程なくしてテーブルの上に美味しそうな夕食が並べられた。 デザートは思った通り、リンゴとバナナのキャラメリゼだ。 ローストビーフなんて、とてもじゃないが自分の家での食卓には並ばないなと思いながら、聖羅は赤屍の手料理をぺろりとたいらげた。 「そろそろ話しては貰えませんか、聖羅さん」 バナナを口にしたところで、赤屍が唐突にそう尋ねてくる。 「何をずっと悩んでいるのです?」 「んぐっ…!」 思わずむせそうになり、何とか堪えた聖羅は慌てて水で流しこんだ。 涙の滲む目を泳がせながらとぼけてみせる。 「な…なんのことですか?」 「おや──私に隠し事をなさる、と?」 赤屍の瞳がすうっと細められるのを見た聖羅は慌てた。 今日は帰らなければならないのに、ここで怒りを買って軟禁されてはたまらない。 「隠し事って言うか……実は…その…赤屍さんのお誕生日のことで悩んでて……」 白状した聖羅に、赤屍は「そんなことでしたか」と苦笑した。 本人に聞くのもなあ…と思って隠していたのだが、こうなってはもう仕方がない。 聖羅は洗いざらい話して、直接赤屍の希望を聞くことにした。 「赤屍さんはどんな風にお祝いされたら嬉しいですか?」 「そうですねえ…」 赤ワインの入ったグラスを弄びながら思案する赤屍の答えを待つ。 エスコートは完璧、聖羅に関する事には色々と気が回る男だが、自分の事には興味が薄いらしい。 「一日中貴女が傍にいてくれればそれで十分なのですが…」 「勿論一日一緒にいますけど、何かして欲しいこととかありませんか?」 「して欲しいコト、ですか」 赤屍が妖しく笑う。 「わかりました、それでは当日その場でお願いするという事で」 「ま、任せて下さい」 そう答えたものの、ナニをさせられるものやら、不安を隠せない聖羅だった。 とりあえず、どんな要求をされても大丈夫なように体力を蓄えておかなければ。 |