逃げ道は9と3/4番線  [ 3/31 ]






9と3/4番線。私は逃げるようにホグワーツに入学した。
辺りを見回すと家族との別れを惜しむ人で溢れ返っていた。
列車に乗ると、こっちも人、人、人。
席はほとんど埋まってしまっている。知らない人ばっかり。
どこかに入れてもらおう、と考えていると、ぱし、と腕を掴まれた。

「おい」

振り返ると、プラチナブロンドでオールバックの見知った顔が目に入った。

「あ、ドラコ、久しぶり」
「アルディス・・・お前、何があった」

ドラコと会うのは何年ぶりだろうか、確か以前に会ったのは合同パーティーのとき。
7歳・・・8歳だったかな?あまり覚えてない。
たぶん、その後に元から悪かった親との仲がさらに悪くなって住所をお婆ちゃんの家に移した。

「特に、何も」
「・・・とにかく、僕たちの所に来い」

言われた通りにドラコについていくと懐かしい顔が並んでいた。
クラッブにゴイル・・・だったかな?相変わらずお菓子をむさぼりくっててこっちに気付かない。
あ、やっと気付いた。目をこれでもか!ってぐらい大きくさせて驚いてる。

「アルディス・・・?アルディスか?」
「そうだけど・・・さっきから3人とも変だよ、私の顔に何かついてる?」
「「「・・・何も」」」

そこまで揃わなくても。まあとりあえず、座れただけでも感謝しとこ。

「ドラコ、ありがと」
「・・・ああ」

その後は他愛もない話をした。組分け帽子がどうだとか、ポッターがどうだとか。
とにかく私は眠くて心底どうでもよかった。
気付くと列車は止まっていた。どうやらホグワーツに着いたみたいだ。
私はぐっすりと寝てしまったみたいでドラコが早くしろと私をせかした。

ホグワーツは想像していたよりもずっと広くて、とにかくすごかった。
・・・ここで私のしたいことが出来る。そう思うととてもワクワクした。



***

D.Side

正直、驚いた。ホームでアルディスを見かけたとき、自分の目を疑った。
父上に言わなければ気付かない程、彼女は綺麗で、美しくなっていた。
最後に会った時は、髪も短くて背も本当に小さくて同い年とは思えない程幼かった。

美しく靡く黒い髪に、吸い込まれるような青い瞳。
透けるような白い肌にすらっとした体型。・・・本当にアルディスか?

いや、そんなことよりもっと前から連絡をとっておけばよかった。
とるつもりだったのだが、父上や母上に居場所をきくのも気が引けたし、
いざ自分で調べたらもうあのベルヴィーナ夫妻の元にはいないとか。
とにかくどこの虫とも知らない奴に目を付けられては困る。
僕は人目をぬって彼女の腕を掴んだ。
驚いたようにびくっと体を跳ねさせ、くるりとこちらを向くとアルディスの瞳に僕が映った。

「あ、ドラコ、久しぶり」

声も昔の金きり声とは違い、凛として透き通ったアルトだった。
向こうは対して驚かず、僕に向けて微笑んだ。
奥底に眠っていた何かが胸の内に込み上げ、気付けば彼女の腕を引っ張っていた。

コンパートメントに入り、アルディスはどこの寮に入りたいか聞こうと思ったのに、
奴は僕の肩にもたれかかり涎を垂らしながら眠りこけていた。だらしがない。
それでもあのベルヴィーナ家の一人娘か?

アルディスとアルディスの両親の仲の悪さはよく耳にしていた。
父上と母上の会話でもよくベルヴィーナ家の話題が出ていたのだ。
でもまさか、アルディスが家出するほどだったとは思わず、少し複雑な気持ちになった。
アルディスの両親は僕の両親と仲がいい。お互いの親が同級生だったという所が一番大きいだろう。
スリザリン寮で仲の良かった4人組。そして同じ年に生まれた僕ら。
昔からよく遊んでいたことを僕は覚えている。
・・・アルディスは覚えているだろうか。

「ドラコ、もう着くぞ」
「ん?あ、ああ」

列車はだんだんと速度を緩めていた。僕はアルディスを揺らして起こした。
まだ寝ぼけているみたいで僕の裾をはし、と掴んで小さく唸っていた。
強めにアルディスを起こし、列車を後にしたがアルディスがいないことに気付いたのは
ホグワーツに到着してからだった。



  


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