冷たい肌に一人前の温もり  [ 19/31 ]




「大胆だったかな」

荷物をまとめながら、ふと思った。
ドラコは奥手だし偉そうにしててかなりのヘタレだから大丈夫かなって思ったのが本音。
そりゃ人前で手を繋いだりしたくないって言ったのは私の方だし、
彼を避けていたのも私、っていうのもあるけど、少しくらい強引になるのが普通なのに。
それが少し爆発したのがこの間の図書館でのキス。
誰に挑発されたかは知らないけど、あれは人の力があっただけで自分の意思で行動した訳じゃない。
だから、今夜は大丈夫。そう思ってしまった。

コンコン、とドアがノックされた。

「はーい」
「シャワー空いたぞ、父上と母上が待っているからさっさと入ってこい」
「ん、ありがと」

ドラコに軽く唆され、私は急いで支度をした。
私は早急にシャワールームを出て、髪の毛を乾かした。

「ドライヤーがないのは不便ね」

たまにマグルの道具がないと不便な時がある。
魔法だけじゃどうにもならないことだってあるのだ。
気付くと、時刻は夜の11時を過ぎていた。

「ドラコ、寝ちゃったかな」

そっちの方が助かるけど、と思いながらドラコの部屋をノックした。
案の定、返事があり私はドアをゆっくりと開けた。
中は暖炉がパチパチと音をたてていて暖かかった。

「わあ、ドラコの部屋っぽい」
「どういう意味だ」

夜だからか薄暗い部屋に、緑のランプが灯りゆらゆらとゆれている。
ドラコはベッドに寝転がりながら本を呼んでいた。
家具は最低限のものしかなくて、かなり殺風景だった。
アンティーク調の家具は母のナルシッサの趣味だろうか。

「すっきりしてて私は好きだけど」
「・・・そうか」

「よいしょっと」

ベッドに腰をかけると、ドラコの眉がぴくっと動いた。
ダブルベッドで二人寝るには丁度いい大きさだった。

「何読んでるの」
「何でもいいだろ、寝るぞ」

その言葉を皮切りにランプはふっと消え、暖炉の火も僅かに暖かさを残すくらいに静かに燃えた。
布団にもぐるとドラコは、ばっと私に背を向けてしまった。
肩まで入るとじんわりと人肌の温もりが伝わってきた。

「あったかいね」
「寝ろ」
「ほんとに何もしないんだね」
「・・・寝ろ」
「こっち向いてよ」
「あーもう!僕にされたいのか!?」

ドラコは肩肘をついて私の手首を勢いよく掴んだ。
その行動に私は驚いて固まってしまった。

「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

暫く見つめ合った後、またドラコはそっぽを向いてしまった。

「・・・優しいんだね」
「・・・・・・」
「ドラコは、シたい?」
「この状況でそう思わない男はどうかしてるな」
「ふふ、そっか。でも、まだ早いと思うんだよね」
「・・・・・・」
「それと、私、怖いんだと思う」

多分、これがドラコを拒む最大の理由で、私の本心。
ドラコのことが好きすぎて、もっと近づきたいって気持ちが
日に日に大きくなるのが自分でも痛いほど分かってる。
分かってるからこそ、急いだらいけないんだと思う。
でもそれじゃ、ドラコが可哀想すぎる。

「だから、これで我慢して?」

ぎゅ、とドラコを後ろから優しく抱き締めた。
冷たい色をした肌とは逆に、ドラコの体は温かくてどくどくと心臓が脈を打っていた。

「それ、逆効果だぞ」

私の方に向きを変えて、目の前がドラコの顔でいっぱいになった。
ドラコの匂いが鼻をつき、私の腰をぐっと引きよせた。
お互いを抱き締め合って、お互いがお互いでいっぱいになるような感覚に心地よくなった。

「・・・好き」
「僕も」
「ずっと一緒にいよう?」
「ああ、」

私のことをこんなに夢中にさせるのは、世界中できっとこの人だけ。


  


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