▼ ▲ ▼

12番隊の同期からサンプルモニターを頼まれた。
学生時代から科学やら研究やらに没頭する少し変わった女の子だけど、とても賢くやる気に溢れた性格なので私も役に立てるならと軽い気持ちで引き受けてしまった。
それがよくなかった。
怪しい青色の液体を飲むと、副作用で他人の考えが頭の中へ流れ込むようになってしまったのだ!


「ごめんね、治療薬はすぐに作るから!夕方までには!」
「う、うん。よろしく…あ、でも虚の考えてることが分かれば討伐には役立つかも」
「変なこと考えないで、大人しくしててよ。作ったら持っていくからね」
「よろしくね」


隊舎へ戻ると、いろんな人の「仕事したくない」とか「帰りたい」とか、「あいつがムカつく」とか「きもい」とか、とにかく様々な気持ちが勝手に入ってくるのでさすがに参ってしまった。乗り物酔いをひどくしたような感覚だ。好きだった先輩は松本副隊長をおかずにしてとんでもなくイヤらしい妄想をしていたので、もう口もききたくない。 


「疲れたなあ…うう…気持ち悪い…」
「なまえちゃーん。こんなとこで何してるんだい?休憩だったらボクも混ぜてよ」
「京楽隊長!あ、えっと…どうぞ」


隊舎裏の修行場ちかくにある土手に座り、気持ちよく風に吹かれていると京楽隊長が隣に腰を下ろした。隊長は「朝から顔色が悪いね」と心配そうに顔を覗き込み、むわっとした色気が頬を熱くさせ、思わず、顔を背けてしまった。
正直、近づきたくない。
入隊して初めて好きになった人が京楽隊長だから、イメージを落としたくないのだ。だって絶対にいやらしいこと考えてるに決まっている。伊勢副隊長や隊の女の子を相手に、絶対そういうことを考えているはずだ。だって京楽隊長だから。あの京楽隊長だから。


「い、いえ…お腹痛くて」

───大丈夫かなあ。今日は暇だし、午後から休ませようか


「えっ!?」
「ん?」
「い、いえ…なんでもありません」


───最近調子悪い子多いからまいったね、どうも。このところバタバタしてたわけだし、順番に休みを取らせるべきかな


「えっ…ええ…!?」
「ど、どうかしたのかい?」


まともだ、まもとすぎる!一体どうしちゃったんだろう、女の子の食べ過ぎでおかしくなっちゃったのかな!?まさかこんな真っ当なことを考えているなんて…疑ってごめんなさい、京楽隊長。
私は深呼吸をし、どうにか気持ちを切り替えて仕事に戻ることにした。京楽隊長の優しさに報いるよう、頑張ってお仕事します。


「だ、大丈夫です。隊長のお顔見たら元気に……」


───あー可愛い。セックスしたい。

「えっ…?」


───なんかこう、マゾっぽいし、嫌がってもねじ伏せたくなるんだよねえ。いちいち誘うような顔するし、参ったもんだよ。ああ可愛い、中出ししたい。むりやりウチに入れて正解だったね。


「ひぇ……!!??」


───この間付き合ってた男はすぐ別れたって言ってたし、ボク立候補しちゃおうかなあ。あ、隊長命令ってことですぐセックスしてもいいかも。…考えたらむらむらしてきちゃった。


「い、伊勢副隊長ーっ!!伊勢副隊長ぉ!!」
「?七緒ちゃんは執務室にいるけど…用があるなら一緒に行こうか」


───まあ嘘なんだけどね。そのまま2人きりでイロイロできたらいいなー。


「きゃーっ!!」
「あ、逃げちゃった…。なんだいなんだい……惜しかったねえ」



- ナノ -