「よっしゃ…着地失敗!」
「ええ!?大丈夫!?」

見事に降りたかと見せかけて、何故か転んでいるレオン。痛そうだ。

「この下は…」
「ん、あれダンペイさんじゃん。」

レオンはリンクの横から、ひょい、と覗き込む。そしてさっさと降り、歩き回る男性に声をかけた。

「ダンペイさん、何してんの?」
「あーあ、おめぇ誰だ?」

ダンペイという男は、不思議そうにレオンを見返した。レオンはぼそりと会ったのは四日前だから分かんないか、と呟いたが、リンク達には聞こえなかった。

「オラァ、迷っちまっただ。灯くんねぇか。」
「灯?…あ、ゼロ、リンク」
「どうしたの?」

ゼロが駆け寄る。アリスもふわりと近寄れば、ダンペイは喜んだ。

「灯だ!その灯でオラを掘れそうな所に案内してくんねぇか?」
「アリスは灯じゃあ…光ってるけど」
『でもゼロさん、困っているみたいですし、助けてあげませんか?』

リンクにゼロとアリスとレオンが頼むように見ると、リンクは仕方無く許可をした。
奇妙な事に、レオンは暗い中でもすいすいと動き、転び、ゼロを巻き込み、簡単に掘れる場所を見つけだした。そこからは、青い炎が現れる。

「次はあっちかなー、よし、リンク、チャットと一緒にあそこに行ってくれ!」
「…何でそんな簡単に分かるんだ?」
「俺の七不思議。ほら、よくあるだろ」
『アンタって大体変な回答するのよね』
「いやー有難う」
「感謝する所じゃないと思うけど…」
「いや、ゼロ。俺の最大の個性だよプラス思考」
『この場合だと、いいんでしょうか…?』

レオンにかかると普段良い筈の事が本当に良いのか分からなくなるから不思議である。知らず知らずのうちに、話題を逸らされているのも気づかない。

「あ、そこの段差、高いよ」
「オラァ、上れねぇ」
「なら、あそこに乗ったらどうだ?」

リンクの機転で、ダンペイは上っていく。光が無いと迷うので、ゼロには先に段差を上がってもらっている。そして誘導し、掘ると、青い炎。

『また…、チャットさん危ない!』
『何!?』

チャットの背後に黒い影。本来ならば暗闇にいるのだから、影はできない。しかし、何かがそこにいるらしく、チャットに襲い掛かろうとしていた。

『きゃああ!』
「チャット!」

リンクが応戦するが、何者かの突進に、吹っ飛ばされてしまった。ゼロも慌てて駆けつけるが、困惑してしまっている。

「な、何…?」
「来たなビックポウ!ダンペイさん、動くなよ!」

ゼロはレオンの声に落ち着きを取り戻し、目を凝らした。巨大な、ポウがいた。

「話には聞いたことがある。アイツがビックポウか!」
「ヒィッ!幽霊だぁ!」

ダンペイが逃げ回り、リンクとゼロは応戦しようと剣を持った。しかしそれ以上に、レオンが早々と対応する。
二人は驚いた。速く、鋭い剣技。いや、剣というには細い物で、敵を圧倒していく。
レオンは、まるで知っていたかのように駆け抜けた。

「リンク、弓矢の方がいい!ゼロ、動きを止めるのを手伝ってくれ!」
「う、うん!」

ゼロは強かった。レオンは感嘆の声をもらしながら、ゼロの援護に回る。ゼロの力強いような、しかし技術としてはかなりの腕であるそれで、ビックポウは容易に抑え込めた。

「リンク、今だよ!」
「頼んだぜリンク!」

二人が息を合わせて下がると、リンクの矢が放たれた。一瞬、キラリと矢先が煌めいたのが見え、そのままビックポウを貫いた。
的確な弓術だった。

「やっぱ、凄い人等だな…」
「えっ?」

蛙が潰されたような声を出し、ビックポウは消滅していく。その後には、宝箱が残った。

「宝箱!リンク、これかも知れないよ!」
「ああ。レオン、開けても構わないか?」
「オッケー!俺ダンペイさん捜してくる!」

すぐさま走り去るレオン。それを背に、二人は箱を開ける。中には、ビンが入っていた。

「空きビン?」
『その様ですが…』
『無駄足じゃない?』

途端、地鳴りがした。そう、今日は三日目。月が落ちる日。二人は、弾かれた様に顔を上げ、リンクはオカリナを取り出した。

『待って下さい!レオンさんは…!』
「三日戻れば問題無い。急ぐぞ!」
「ストップ!」

いきなりの制止に、全員が振り向いた。そこには走ってくるレオン。

「君ら何探してたんだっけ?」
「…ハートのかけらだ」
「やっぱりな。オカリナ吹くのか?」

その問いに、リンクは目を見開くが、素直に頷いた。

「そっか、じゃあお別れだ。また会えるといいな。」
「レオンは、この事を知ってるの?」

ゼロが聞くが、レオンは曖昧に返すだけ。地響きが、より大きくなる。

「もう時間が無い。いいか?」
「う、うん…」

そうしてオカリナを吹くと、辺りは白い奇妙な世界に。時が、逆行しようとする。

「君らさ!ハートのかけら欲しいんなら、二日目に来なよ!」
「えっ!?」

ニッと笑ったレオンに、四人は向き直す。しかし時間は、もう止まらない。

「三日目は空きビンが手に入るんだ!有効に活用しなよ!」
「何で君はそれを知ってたの!?」

その問いに答える事はなく、静かに時は戻っていった。





再び二日目、四人はイカーナの墓場にいた。言われた通りに進めば、ハートのかけらを手に入れる事ができた。それなりの苦労はしたが。

そして三日目、四人は町の外にいた。快晴の空が、綺麗だった。

「暖かいね、アリス」
『はい。とても良い日です』

四人は歩き回っていた。特に何があった訳ではない。その時、目の前に誰かが倒れていた。背中には赤いゼリーの敵が跳び跳ねている。
黒目黒髪の、少年。

『あ、ゼロさん…!』
「リンク、もしかして、彼かも知れないよ!」
「彼…?ああ、レオンという女の事か」

ゼロはその言葉に口が塞がらなかった。女、だったらしい。
放っておく訳にもいかず、一応、用心しながら近寄ってみる。いきなり、彼女は起き上がった。

「寝過ごしたー!」
「ええ!?」
『アンタって毎回何かしてるわよね。』

チャットが慣れた様に話し掛ける。オカリナで時を逆行したので、おそらく相手は覚えていないと気づき、ゼロは急いで取りなそうとした、が。

「お、また会ったね、少年達!」
「覚えてるの…?」

当たり前!と近くにいたゼリーの敵を叩いた。ベチョ、と凄い音がする。
手を半分突っ込んだ状態でレオンは笑いながら言った。

「まさに運命ってやつ?」
「嫌な運命だな」
「え、ばっさり来たよ。俺何気に傷つくよ」
『アンタはそんな神経してなさそうじゃない』

リンク達は、端から見れば冷たそうに見えるが、そこに敵意は無かった。
ゼロもアリスも、楽しげに話す。

「さて、また俺連れてってもらっていいかな?」
「勿論、いいよねリンク!」

リンクは何も言わなかった。歩き出した彼の背に、ついていく四人。
それは新しい旅人も含めて―――。



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