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君が居る場所

...



ゴロリと鬼の頭が落ち、無一郎を睨む。

「こんな餓鬼に私がやられるとはっ!!!クソ!!ふざけるな!!!呪ってやる…お前をっ」
「うるさいな。早く消えなよ。」

罵倒を続ける鬼の頭をさらに細く切り刻む。パラパラと黒くチリになって消えてゆくのを無一郎は見つめていた。 

「胸糞悪い鬼だね。」



こうして鬼の頸を切り罵倒される事は珍しくない。


慣れているはずなのに、心が荒む。


そんな時はなぜか、無一郎は私邸に戻る気にはなれず、無意識に足がある所へと向かう。



そこは藤の花の家紋を掲げている屋敷。
記憶の維持が難しい無一郎だが、ここの場所だけは忘れずにいる。

鴉からの報告を受けていたのか、屋敷に住むなまえが門の前に立ち、無一郎の到着を待っていた。


「お疲れ様でございます。今日はいかがなさいましたか、無一郎様。」
「…………なんでだろう。気がついたらここに来てた。」
「そうでしたか。お食事になさいますか?」
「うん。」

無一郎に気づいたなまえはとても優しい笑顔で無一郎を出迎える。
彼女はここの屋敷の家主の娘だ。と言っても家主は足を悪くしており、なまえが全てを一任されている。

なまえは部屋で待つ無一郎に寝巻き用の浴衣を用意して風呂へ案内した。
その間にササっと食事の用意をしてお盆に並べていく。以前、訪れた時に無一郎の好物を聞いており、無一郎が来る度にふろふき大根を出している。

風呂から上がった無一郎の元に、料理を配膳する。
無言で食べる無一郎に美味しいですかと聞けば、小さく頷いたのが分かった。
なまえはごゆっくりと一言だけ言って部屋を出た。



東の空が白み始めた頃、なまえは縁側でお茶を飲んでいた。
無一郎はその姿をどこか懐かしく思い、声をかける。

「何してるの?」
「わっ!ビックリした…無一郎様でしたか。私、この空が白み始めるのを見るのが好きなんです。」
「ふぅん。変わってるね。」
「ふふふ....そうですか?」
「うん。なんだろう。この話、前にもした?」
「そうですね。もう何度かしてるかもしれません。」
「そうなの?ごめん。僕、すぐ忘れちゃうから…」
「構いませんよ。」


無一郎様は優しいお方です。と笑うなまえはとても優しく穏やかだ。
無一郎はこの優しく穏やかな雰囲気が好きだった。
なまえと居ると鬼の討伐や柱としての責任、すべてから解放される。ただの時透無一郎に戻れる気がした。

「僕、君の雰囲気が好きだな。」
「ありがとうございます。」

なまえの肩に頭を乗せて目を閉じる無一郎。
無一郎の長い髪がサラッと流れ、昇ってきた太陽に当たりキラキラと光った。



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