「くっついたんだ、あの二人」

電話口から聞こえた声は、どんな感情を示してのものか真意はわからなかったけれど、一見愉しんでいるように響いた。
何とも白々しいな、と思う。

「誰かさんのおかげで、ですね」

皮肉をたっぷり込めれば、何がおかしかったのか、返ってきたのは聞いている者を不快にさせるような笑い声だった。

「よーし、じゃあ早速明日トビオちゃんを苛めに行こう!国見ちゃんも一緒にどう?」
「…怖く、ないんですか」
「何が?」
「日向が好きなんでしょう?その日向に嫌われることが、怖くないんですか」

どういう神経からものを言っているのか、一般人には凡そ見当のつかないそれは推し量るのも面倒くさい。
けれど、自分ならばそう思うだろうと感じたからこそ、敢えて聞いてみた。
日向が影山を気にしているのを知っていて誑かして、かと思えば背を押してやって。
そんな相手を日向がどう思っているか。下手をすればというか、普通に考えてそんな人間は嫌われてしまうのに。
何故そこで更に追い打ちをかけようとするのか、国見には到底理解不能だった。

「何でもいいんだ」
「え?」

やけにあっさりと紡がれた言葉に、どういうことかと相手に見えてもいないのに首を傾げる。

「憎しみでも怒りでも後ろめたさでも。チビちゃんの中に居座り続けられるなら。そうしたら、覆すのだって容易いんだから。それにさ、自分の感情に無自覚なチビちゃんより、トビオが好きだって自覚したチビちゃんを落とす方が達成感あっていいじゃない」
「……ホント、嫌な人ですね」
「有り難う」
「どういたしまして」

きっとこの人には何を言っても無駄だろうとわかっているから、蔑んでやることも褒めてやることもない。
それがどんなに人間として最低であろうとも、どこまでも自分を貫ける及川を羨ましいと思ったことも、勿論言ってやらない。

「俺も、行こうかな」
「お、なになに、珍しいね」
「自分から誘っておいてその言い草ですか」
「だってホントのことじゃん。あとは、そうだなー…金田一でも連れて行くかなー」

及川を見習って、というのは語弊があるけれど。
電話口からは、遊びの計画でも立てるように人の恋路を邪魔する企てがなされている。
絶賛巻き込まれようとしているチームメイトのことを余所に、国見は突然の及川の登場に狼狽するだろう日向のことを考えた。ついでに、正直な日向のことだからもう全てを知っているだろう影山がどんな反応をするのかも。
人気者の恋人というのは大変だな、と同情ではなく思って、国見は及川ばりに人の悪い笑みを浮かべるのだった。


終幕?
寧ろここからが本番だよ


新たな幕開けを知らせる音はすぐそこに――…






* * * *

落ち着くところに落ち着きました……?
影日の焦れったい感じが書きたかった…ような。
お試しの付き合いをしていたのは、及川を筆頭に黒尾、赤葦、…あと一人はご想像にお任せします。



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