始まりの合図のキス


初めてのキスは、決戦前夜だった。
二人で旅をしようって約束した、その後。

イデアはあたしにキスしてもいいか、なんて聞かずに、自然とそうしてた。
不思議な事に、あたしもそれを受け入れていた。
初めてのキスは甘くて酸っぱい、って聞いた事ある。
けどあたしには甘すぎて、全身が熱くなるのを感じずにはいられなかった。

同時に、嬉しかった。
イデアに恋なんてしてはいけない、勇者に恋なんてって前は思ってた。
けどこの溢れそうな気持ちを抑えるのは大変で、イデアからの告白を受けた時は思わず泣いてしまった。

邪神を討伐して、ようやく落ち着いて始められる二人旅。
旅が始まると同時に、実ったこの恋の成長も始まるんだと思ったら、鼓動が高鳴ったのを感じた。

「……ねえイデア?」
『ん……何だい、ベロニカ?』

あたしの呼びかけに返答して、あたしの目線と合わせてくれるように跪くイデア。
そんなイデアの頬に手を添えて、あたしは額にそっとキスをした。

二人旅と、恋の始まりの合図のキスを。

2017/11/7

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