二人旅の間の休息時間だった。 空は暗い青に染まり、無数の星が輝いている。 ソルティコの町から見渡せる海が、潮騒の音を奏でて辺りを包み込んでいた。 砂浜に座る二つの影。 一つは青年、もう一つは少女。 二つの影は身体を寄せ合い、海を見つめていた。 特に何かを言う事もなく、潮騒の音を耳で受け取りながら揺らめく海を瞳に映す。 ふと、青年、イデアが隣にいる少女、ベロニカを見た。 彼女はそれに気付いていないようで、変わらず海を眺め続けている。 イデアがこちらを見ていた事に気付いたのは、彼がベロニカの左手を取った時だった。 少し見上げる形でベロニカはイデアを見つめる。 どうしたの?そう聞くよりも早く、ベロニカの薬指にはイデアの唇が当てられていた。 一瞬で、突然の出来事。 ベロニカはきょとんとした顔を浮かべ、何が起きたのか理解すると次第に頬を赤らめた。 『好きだ、ベロニカ』 口をパクパクさせていた彼女に告げられる、青年の穏やかで優しい声。 それは潮騒の音と共にベロニカの耳へと流れていく。 相変わらず顔を赤らめながらも、ベロニカは目を伏せると笑顔を見せた。 「あたしも……好きよ、イデア」 恋仲になり、互いに口にしてきた言葉。 始めは中々口にする事の出来なかったそれは、時間が経つにつれて自然と口にすることが出来るようになっていた。 とは言え、相変わらず鼓動は高鳴り緊張してしまう事に変わりはないのだが。 変わったと言えば、想いの強さだろう。 どの好きも、以前の好きとは違い想いが強くなっていると確かに感じる言の葉だった。 イデアの心にはある感情が生まれていた。 恋仲になった時から既にあったその感情、好きと言う言の葉と同様にその感情の強さも次第に強くなっていった。 ――まだ準備が出来ていない。 その準備が出来たら、必ずその感情の意味をベロニカに伝えるとイデアは誓う。 彼女の薬指にキスを落として。 “ボクと結婚してください” イデアがベロニカにそれを伝えるのは、そう遠くない未来の話。 2017/11/28 恋人同士になって随分経った頃。結婚指輪がまだ出来てない、そんな頃の二人のお話。 お題でお砂糖たっぷりな勇ベロに慣れたいと執筆してきましたが、とても楽しく執筆出来ました^^* [*前] [TOPへ] [次#] |