「わたしたち、しばらく会わない方が良いと思うの」






夜、あたしのマンションでロビンが言いにくそうに放った一言。


「…………へ?」

あまりのことに思わず気の抜けた返事をしてしまった。
どーいうことよ、それ…
なんか別れる寸前のカップルみたいじゃない!!
いや、たぶん聞き間違いね。
そうに決まってるわ。


「ごめんよく聞こえなかった」

「……しばらく会わない方がいいと
「ロビン、やっぱり言わなくていい」

ロビンの口から出た言葉はやっぱりさっきと変わらなくて、一気に奈落の底に落とされたような気分になった。

もしかしてロビンはあたしのこともう好きじゃなくなったの?
時間を置いて二人の関係が冷めていくのを狙ってるとか。


「なんでいきなりそんなこと……」

頭がまるで追い付かなくて言葉が続かない。


泣きそうになってうつむいたら不意にロビンに頭をそっと撫でられた。
突き放すようなことを言ったのに、優しくあたしに触れてくるロビン。

一体なに考えてるの?
言ってることとやってることがめちゃくちゃじゃん。


「ナミちゃん」

名前を呼んでロビンがあたしの手を握ったから仕方なく顔を上げれば、ロビンがすごく困った顔をしていて、


「ごめんなさい
今のは言い方が悪かったわ
ナミちゃんのことが嫌いになったわけではないの」

「じゃあ…どーいうことよ」


とりあえず嫌われたわけじゃないってわかったからすごくすごく安心したけど、紛らわしい言い方しないでよね、もうっ
ちょっと泣いちゃったじゃない。


「わたしたちは交際しているわけだけれど、その前に教師と生徒だから」

「だから?」

「けじめが大切だと思うの」

「んー、まあね」

「だから明日から1週間は、
ナミちゃんと会うのを控えるわ」

「だ・か・ら、なんでそうなるのよ!!」


思わず座ってたソファからガクッと落ちそうになった。
まわりくどい言い方しといて結局同じところに行き着いてるのは気のせいじゃないわよね。


「……まったく説明になってないよロビン」

「だって…」

「だって?」


ロビンは少し間を置いてそれからはっきりと、




「あと3日で試験期間が始まるでしょう?」





あ、すっかり忘れてたわその存在。
なるほどね、だからなのね。


「ナミちゃんにはちゃんと試験勉強に専念してほしいから」

そう言って上目づかいであたしをみつめてくるロビン。

うっ、かわいい……
あたしがそーいうことされるの弱いってわかってないで無意識でやってるんだろーな。


「で、でもあたしそんなに勉強しなくても毎回学年順位10番以内には入ってるよ」

「それは知っているけれど、ちゃんと試験には万全な態勢で臨んでほしいの」

「それは教師として?」

「ええそうね
でもその……恋人、としてもわたしのせいでもしナミちゃんの成績が落ちたら、とてもいたたまれないわ
ナミちゃんの負担にはなりたくないから」

そう言ってロビンが苦笑して目を伏せたから、あたしはなんだか胸を打たれてしまった。

ロビンはいつもいつも感情的に突っ走るあたしを冷静に導いてくれる。
だから教師と生徒、不安定なバランスで成り立っているこの関係が崩れずに、こうして一緒にいられるんだと思う。
こういうとき、やっぱりロビンは大人なんだなって実感して、あたしは反省する。

あたしもロビンをしっかり支えられるようにならなきゃ。


「わかった
わかったよ、ロビン」

「え?」

「あたし、学年トップになってみせるから」

そう言ってあたしに触れていたロビンの手をしっかり握り返したら、

「……なんだか極端な気がするけれど
わたしはナミちゃんが頑張ってくれるならそれでいいわ」

「いいのっ
どうせ頑張るなら絶対に1番になってみせるんだから」

「ふふ、じゃあ楽しみにしているわ」


……この感じは絶対に期待してないわね、まったくっ


「じゃあもし1番になったら、あたしの言うことなんでも聞いてもらうからね」

「ナミちゃんそれは……嫌な予感しかしないのだけど」

急にロビンが焦り出したけど、そんなの知らんぷり。
どーせ頑張るならやっぱりご褒美は必要でしょ。


「その代わり、成績の順位が発表される日までロビンに触れるの我慢するからさ」


3日後に試験が3日間行われて、さらにその2日後に成績が発表されるから…

ということは8日間ロビンに触れないってことね。
自分の理性を保っていられるかわからないけど、頑張るしかない。


「ナミちゃんがそこまで言うのなら、わかったわ」

ロビンの小指とあたしの小指を絡めてささやかな約束の儀式。

「言うこと聞いてくれなかったら針千本飲ませるからね」

「それは1番になったら、の話でしょう?」

そう言ってにっこりと余裕の笑み。
くそー絶対1番とってやる!!

「じゃあ今夜はこれからの禁欲生活に備えて、ベットの上でロビンをじっくり堪能することにします」

ロビンの手をとって寝室に連れて行こうとしたら、ひらりとかわされロビンはそのまま玄関へ。

ちょっと、どこに行くんですかおねえさん…


「それよりもこれからに向けて今夜から試験勉強することをおすすめするわ
じゃあ、がんばってね」


そのままバタンと扉を閉めてロビンは帰っていった。



ロビンの…
ロビンの、薄情者っ!!!




あれは絶対楽しんでるわね。




<あとがき>
ということで、ここからどうやって「夜の学校でイチャイチャ」に持っていくかは先が読めたと思います
ナミちゃんはロビン先生のために勉強を頑張るのに、ちゃっかりご褒美を求めちゃう感じがすごくナミちゃんらしいと思う。






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