"獣のような勢いでドラキュラが襲いかかってくる"という噂が校内中に出回ったおかげで、2-Bのお化け屋敷は大繁盛。

ナミのドラキュラのおかげだよ、だなんてみんなに感謝されたけどなんか素直に喜べないわねこれって……


学園祭が無事に終わり、後片付けを手分けして済ませて大量のゴミを運動場横の倉庫に持って行っていく。
空を見上げれば、さっきまで晴れてたのに今はどんより鉛色でいつ降り出してもおかしくない。

降り出さないうちに帰ろうとゴミを出して足早に教室に戻ろうとしたら、ロビンとばったり遭遇。
目が合って話しかけようとしたら、ロビンがくるりと回れ右して逃げていった。

「あ、ろびーん!!」

なんで逃げるのよっ
さっきは二人であっまーい時間を過ごしたのに!!

逃がすもんかと教室に置いてた自分の鞄をひっ掴んで、みんなにさよならを言って資料室に向かった。


「ロ・ビ・ン!!」

ノックもせずに扉を開いて、案の定中にいたロビンに詰め寄る。

「なんで逃げたのよ」

「なんのこと?」

「とぼけないでよ
さっきあたしの顔見て逃げたでしょうが」

そう言ってロビンの頭に軽くチョップ。
痛いわ、なんて言ってるけど許しませんっ

「正直に言わないと、ちゅーするわよ」

「……言うわ、だってどんな顔をしてナミちゃんに会えばいいのかわからなかったから……」

そう言ってロビンは顔を隠すようにうつ向いてもじもじしてる。
あっさりと白状されるのも、それはそれで傷つくけど

「なによそれー!!!!」

「………え?」

かわいい、かわいい、かわry…
かわいすぎるわっ!!
なによこの驚異的な可愛さはっ!!

椅子に座ってまだもじもじしてるロビンの頭をぎゅーっと胸に抱えこんで、ひたすら髪の毛にキス。
しばらく無心になってちゅっちゅしてたら腕の中からくぐもった声がするから、しかたなく解放してあげる。

「ナミちゃんくるしいわ
正直に言ったのにキスするなんて」

「今のはキスしないほうがおかしいわよ」

無自覚なのが一番おそろしいわねまったく…

「どうして?」

ロビンが不思議そうに首を傾げてきょとんとするから、あたしは肩をわなわな震わせる。
だーかーらーいちいち可愛いことしないでよ!!
もう辛抱たまりませんっ

再びロビンを抱きしめようとしたら、さっと素早くかわされた。


「ロビンのけちっ」

「だって息苦しいもの」

はぁ…なんかもう家に帰りたくなくなったじゃないの。
こんなかわいい生き物を置いて帰るなんて……
明日から2日間学校休みだし、学校にいても長いこと一緒にいれないし。
ああもうっ!!

しょんぼりしながら窓の外をみればいつのまにか雨が降り出していて、耳をすませばざあざあと雨が激しく地面を打ちつける音がする。

「本格的に降り出してしまったみたい」

「ああー帰るのめんどくさい」

それにロビンと離れたくない…

「ナミちゃん、帰る準備はした?」

「………うん」

ロビンはあたしと一緒にいなくても寂しくないのかな。

玄関まで一緒に歩いて、靴に履き替えてバイバイって言って帰ろうとしたら

「ナミちゃん、どこに行くの?」

「…………へ?」

「車で送っていくからついてきて?」

そう言ってロビンは職員用玄関にスタスタ歩いていく。
これって…
これって…
なんかすごく恋人っぽい!!
さっきまで急降下してたテンションが一気に上昇していくのがわかった。



二人とも傘を持ってなかったからロビンの車がある駐車場までダッシュ。
急いで車に乗り込んだのに、結構びしょびしょになってしまった。
ロビンに家までの道順を説明していざ出発。

あたしはしっかりと助手席に座って思わずにんまり。

「ナミちゃん、危ないからシートベルトしてね」

「ロビンって運転下手そうだね」

「そんなことはないと思うけれど」

いつもぼけぼけっとしてるから心配だったけど、意外と運転はうまいみたいで車は静かに道を走っている。

ああ、ずっと家に着かなきゃいいのにな。

次々と流れていく窓の景色を眺めるのをやめて、横で無言で運転するロビンを見つめる。

いつになく真剣な眼差しでハンドルを握るロビンにどきどきして、無表情のロビンはなかなか珍しいけどあらためて美人だなあって思った。

「なあに?」

目の前の信号が赤に変わったからゆっくりと車を停止させてロビンが不思議そうにこっちを向く。

ロビンも玄関から駐車場までの短距離で雨にやられたらしく前髪がおでこにくっついてて、いつもより幼く見えた。

「前髪がぐしゃぐしゃだよ」

そう言いながらシートベルトを外して、身を乗り出してロビンの方に近づいてから前髪を横に流してあげた。

「ありがとう」

そう言ってロビンがふにゃんって笑うから、バチンと頭の中でなにかのスイッチが入った音がした。

「ロビン」

目の前にある美味しそうな唇に自分の唇を重ねて、下唇を舌でなぞる。

「んんっ………」

あーもー止まらないかもって思っていたら、後ろの車からクラクションを鳴らされて。
仕方なく助手席に戻る。

「やだもう…ナミちゃんのばかっ」

ロビン、顔真っ赤だよ。
余裕のあるふりをしてみせるけど、自分の心臓がばくばく鳴ってうるさい。

それからお互い何も話さずにいたら、あっという間にあたしの住んでるマンションに着いて。

「ナミちゃん、着いたわ」

「うん」

「………………」

「………………」

しばらく無言で車から降りずにじっとして、このまま離れたくないって強く強く思ったから、

「家に上がっていかない?」

気づいたら口に出していた。

「……でも…」

「このままロビンと離れたくない…から」

「…………そう
わたしたち同じことを考えていたのね」


そう言ってロビンが恥ずかしそうに笑った。




<あとがき>
今回で終わらせるつもりだったのに…
終わりませんでした。
次で完結です。
予想以上に長くなってしまった。
ロビン先生のやることなすことに可愛いと感じるナミちゃん。
そしてきっとロビン先生は、可愛い可愛いとはしゃいでるナミちゃんを可愛いと思っています






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