休みが明けて、あたしはいつもより早く登校した。
ほとんど人の気配がしない校舎を歩いて教室に向かう。

きっといるはず。

漠然とした確信を握りしめて、教室のドアを開けた。


「おはよう」


やっぱりビビはいた。
予感は当たったんだ。
あたしはビビに言わなければいけないことがある。
伝えなきゃ。


「ビビ、おはよう」

自分の席について鞄を机の横に掛ける。
隣を向いて、とりあえず何から話せばいいかと考えてたら


「ナミさん、この間は急に帰ってごめんなさい」

「ううん、いいの
気にしないで」


そのあと、二人とも黙り込んでしまって。
せっかくのチャンスなのに。
なんのために今日早起きしたのよ。
今言わないと、ずっとビビとぎくしゃくしたままの関係になってしまう。


「あのさ、ビビ
あれからずっと考えたんだけどやっぱりビビとはいつまでも親友でいたいと思う
これはあたしの身勝手でわがままな想いだけど、それでもビビを失いたくないの」

「…………ナミさん」


ビビの気持ちを無視したことを言っているのは十分わかってる。
だけどこのままお互いがお互いを避けながら過ごす生活を想像したくないから。
今までも、これからもビビをずっと信頼してるから。
一緒に笑ったり泣いたりしたいんだよ、ビビ。


「ビビは、どうしたい?」

そう尋ねたら、ビビの瞳から大粒の涙が溢れてきて、

「ビビっ!!
どうしたのっ
ごめんっ、やっぱり自分勝手だったよね」

「…っ……ちがう、…わ…」

「え?」

「うれしい、の
嫌われたと思ったから…
もう昔みたいには戻れないと思ってた
だから………っ…」


あたしたち二人とも同じこと考えてたんだ。
お互いに相手を気遣って怯えてた。

「ビビ」

ビビの蒼い髪をゆっくりと撫でながら泣き止むのを待った。


「ありがとう
いつもそばにいてくれて
励ましてくれて
ビビに今までたくさん救われたよ
これからも支えて欲しいんだ
あたしもそうするから」

「それはこっちのセリフだわ、ナミさん」


ビビがようやく笑ってくれて。
思わずあたしも笑みがこぼれた。


そうこうしているうちにどんどん生徒が登校してきて、クラスメイトが続々と教室に入ってきた。


「たくさん迷惑かけるかもしれない、いや絶対かけちゃうけど、これからもずっとよろしく」

そう言って右手を差し出したら、

「ええ、そのときは責任持ってナミさんの面倒みさせてもらうわ」

ビビも右手を差し出してあたしたちはしっかりと仲直りの握手をした。


感謝の気持ちが掌から伝わっていればいい。















授業が終わった放課後、あたしはさっさと教科書類を鞄に入れて隣の席に声をかけた。

「ビビ、今日生徒会?」

「いいえ、でも今日は一人で帰るわ」

「な、なんでっ?」

せっかく仲直りしたのに。
どうしてそんなこと言い出すんだろう。

「ナミさんにはまだやることが残ってるでしょう?
その問題を解決したらまた一緒に帰るから」

言わずもがな。
それってロビン先生のことだよね、きっと。


「ビビ…」

「ちゃんと向き合って、今度こそちゃんと伝えなきゃ」

真っ直ぐとあたしを見据えて言ったから、不意に泣きそうになった。
ビビがあたしの親友であることを、あたしは誇りに思う。

「うん、伝えてくるよ」

ビビが背中を押してくれたから、あたしはもう一度勇気を出すことができる。


「健闘を祈るわ」

「ありがとう」














なんだかいつもの廊下が長く感じた




<あとがき>
無事、きちんと仲直り出来ました。
ビビはナミちゃんへの想いを昇華させて、ナミちゃんを支えていくことを決めたみたいです。
まあとにかく頑張れナミちゃん







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