あんたはわたし
「サーンージー!腹減ったあ!飯ィ、飯飯飯!」
んー?
うるっさいなあ、ルフィか。
何で朝から私の事起こしてくるわけ?
にっしても
今、何て言った?
今度は布団ごとゆさゆさと揺さぶってくる
「なーサンジィ。飯食いてーよぉ」
「ハア!?」
「うおぉー。やっっと起きたかぁ!」
布団を一気に捲りあげた。いやいや、何を言ってるのこのアホ船長は。アホなのはいつものことだけど、朝から新ギャグですか?
「ハァ、何言ってんの?朝ごはんならサンジに作って貰ってよね。」
「?オメェ何言ってんだ?お前がサンジだろ。」
「はいはい、意味解らない事言わないの。」
「いーから早く飯作ってくれよぉ!」
「くどいなー、もう」
あまりにもしつこいから、部屋から出ようと起き上がろうと布団を捲る。
あれ?
この部屋……
「私の部屋じゃない!」
ていうかいつの間にかルフィもいないし、なにこれなんなの?
まさか…まさかだよね?
そう思いながら恐る恐る鏡を除き込んだ。
「なにこれええええ!!」
バンッ
「名前ちゃん!」
私が悲鳴をあげたと同時に、勢いよくドアが開いた。そこにたってたのは、信じられないけど紛れもなく
自分。
「まあ、大体検討はつくけどさ」
「俺と名前ちゃんが入れ替わった…?」
「信じられないけど、そういうことみたいだね」
「ん?待てよ。ってことは名前ちゃんのおっぱい揉みまくり「ぶさけんな」
ゴツンと一発ぶちかますと、冗談だよーって嘆いてた。そんなことよりこれからのこと、どうしよう。
勿論私は料理なんて出来ないし、戦いだって得意じゃない。何よりサンジに私の体見られるなんて
「不本意だわ…」
「何が?」
つい本音がもれてしまった。それにしてもこの男、何でこんな落ち着いていられるのよ。
「何であんたそんなに落ち着いてんの?」
「ん?だって大好きな名前ちゃんの体を一日中見てられるからさ〜!」
また、こいつは。
いつものメロリン状態で、目までハートになってやがるわ。
「はいはい、それよりさ、こんな状態で本当のこと言ってもきっと皆に頭おかしくなったと思われるだけよね?」
「ああ、それならロビンちゃんに相談しよう」
その手があったか。
「たまには冴えてるじゃん、サンジ!」
「もっと誉めてぇぇぇ」
「アホか」
「――――って訳なんだけど。」
「それで、ロビンちゃんなら何か元に戻れる方法知ってるんじゃないかと思ったんだ。」
ロビンなら信じてくれるよね?
「成程、ね。」
サンジが入れたコーヒーをテーブルに置いて、神妙な顔付きになる。
「それなら少しだけ、本で読んだことがあるわ。」
「本当に!?」
「ええ。極稀にある不思議な現象らしいわ、私も今まで実際になった人なんて見たことはないのだけれど…」
「それで?解決方法はあるのかい?」
「1つだけ。それは…」
「「それは?」」
「入れ替わった人物同士が熱い口づけを交わすこと。」
「はい?」
ちょっと、冗談でしょ。ていうか冗談と言ってください。ロビンは爽やかに、じゃあ頑張ってねとか言いながら手をふって去っていった。
無理だよ…サンジと私が
あ、熱い口づけ!?
「名前ちゃん」
「な、なによ」
「今は頼りがそれしかないんだ。嫌かもしれないけど、我慢して。」
「でも…っ」
「だって俺の変わりに料理作れないだろ?」
う、確かに。
むしろ私は料理に関しては全く出来ないのだ。
「目、閉じて?」
うーーーー!
こうなりゃヤケクソよ!
私を抱き寄せてから、人差し指と親指で顎をクイッと上に持ち上げて、そっと唇を重ねてきた。
「ん…」
恥ずかしい。少し声がもれてしまった。だってサンジの舌が、生暖かい舌が、私の舌を練っとりなぞってくるんだもの。優しく私の舌を吸い付いたり、私の口の中でサンジがいったり来たり。さすが手慣れてる。
少し、煙草の匂い。
"トクン、トクン"
あれ?
なんだろう、この音は。
「あれ?戻ってる…?名前ちゃん!もう戻ってるよ!」
「あ、本当だ………」
「良かったね、名前ちゃん」
何だろう、頭がボーッとする。それに、この音の正体は何んなの?
"トクン、トクン"
心臓が痛い。
「さ、朝ごはん作るから名前ちゃんは座ってて」
馬鹿だ、私。
もうちょっとあのままで良かったなんて、バカなこと考えるなんて。
"トクン、トクン"
この音の正体は
恋の音、ですよね。
あんたはわたし
(もう一回入れ替わんないかな)
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