友達以上、恋人以上
おはようございます。
突然ですが、問題です。
その1
世界で一番カッコいいのは誰か?
その2
世界で一番可愛いのは誰か?
その3
世界で一番罪深いのは誰か?
正解?
認めたくないけれど、全部この船のコックさんサンジ君でした。
なんて、朝から馬鹿みたいに自分の脳内で問題を出して自分で答えても、誰も突っ込んでくれやしない。
肝心なその想い人、サンジに至っては私の事をまるで女の子扱いしてくれない始末。
おっと、こんなことを脳内で考えていると、船の後方で頬杖をついて、何やら遠くを見つめているサンジ君を発見致しました。
試しに話しかけてみるとしましょう。
「サンジ、おはよ!何してんの?」
「おお、名前か。別に何も」
「へー、そうですか」
「で、何か用か?」
「別に特にこれといった用事はないんだけどね」
「そうか、なら邪魔だな。あっちで大人しく遊んでろ」
はい、こんな感じです。
何故?何故なんですか?特別に何かした覚えはないし、嫌われるようなことをしたつもりもないのに、何故私だけ野郎共と一緒の対応なのか。気になって気になって、毎日毎日奴のことを考えてる内に、信じられないことにいつの間にか好きになってしまっていたというこの現実。
「ねぇ、聞きたいんだけど」
「なんだよ」
「何で私だけ女の子扱いしてくれないの?」
「んー、そうか?まあ俺はペチャパイとガキには興味ないからさ」
「嘘だ」
「あん?」
「だって、この前の村で小さい女の子にはちゃんと優しくしてたし、胸が小さいお姉さんにもいつもみたいに興奮してたじゃん」
そもそもサンジはガキだからとか、胸が小さいからとか、そんなつまらないことで女の子の接し方を変えたりするような奴じゃないことを、私は知っている。
大体そんな奴なら、私はサンジを好きになったりしなかった。
「名前って、俺のことよく見てるんだな」
「そりゃあ、ね」
「なんていうか…ずっと、名前みたいな女友達が欲しかったのかもしれない」
相変わらずサンジは遠くの海を眺めながら、話し続ける。何を考えているのかは全く解らない。
というか私に対する態度がいつもこんな感じだから、本音を読み取れないのだ。
「俺は、例え老人だろうと赤ん坊であろうと、レディーはレディーだ。女の子に対する接し方を変えるつもりもない。常にそれを女性に失礼のない様、意識して接してるつもりなんだ」
「うん、凄く解るよ」
これでも一緒に航海をして長いのだ、サンジの事は月日を重ねる事に理解してきたつもりだ。
「だから、名前みたいに素の俺を出せる女って何か初めてでさ」
「そっかそっか」
何だか自分がそんなポジションに居たことに、意表をつかされてしまった。女なのにあまりにも適当な扱いだから、てっきり眼中にすらないのかと思っていたら、女の子扱いしてくれない理由がそういう意味だったとは。
しかしこれは、告白しても友達としてしか見れない、と言われたようなものだ。告白さえできないとは。悲しすぎるにも程がある。
「って思ってんたんだけど」
「うん?」
「その友達だと思ってた奴は…適当にあしらっても、毎日毎日懲りもせず話しかけてくるし、遂には俺の夢にまで出てきやがった」
サンジは体制を変えると、そのまま俯いてしゃがみこんでしまった。
「気づいちまったんだよ…」
「………?」
「どうやら俺はそいつに惚れちまったらしい」
「それって……私のこと?」
俯いていた顔を上げて、視線を一瞬こちらにずらしたと思うとすぐに反らされ、立ち上がってスタスタと歩き出してしまった。
まさか、まさか。
サンジが私を好きだったなんて。
引き留めようと、咄嗟にサンジの手を握ってしまった。そのまま二人とも、その場に立ち尽くす。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ!それってまさか、告白のつもり!?」
「うっせぇ!俺は一回しか言わねぇ」
「一回も何も、まだ何も………」
そう、まだ何も聞いていないよ。欲張りかもしれないけど、本当の気持ちが知りたい。きちんと言葉で伝えて欲しいから。
自惚れじゃないって、安心させて欲しいんだ。
「好きになっちまんだよ、名前のこと」
そう言ったサンジを見ると、頬が赤く染まっていて、つい顔がにやけてしまう。だって、だってね?可愛いの、凄く。
凄く凄く、愛しい。
今にも嬉しくて踊り出しそうなこの気持ちを、必死に押さえる。
私も伝えなきゃいけない事があるから。あなたに先に言われてしまったけれど
私の、本当の気持ちを
「あのね…私も………」
友達以上、恋人以上
(両想いだったんだね)
(俺がナミさんじゃなくて、ペチャパイの名前に惚れる日が来るなんて)
(ペチャパイ言うな!)
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