キス魔だから






「んっひゃー!次は誰にしよっかなーあ、うへへへ」

「はあ、また始まったわね」

「ナミ!あいつに酒飲ましたのお前かよぉ!?」

「私が飲ます訳ないじゃない!毎回毎回あんな恐ろしい状態になるのに!ウソップあんたこそ飲ませたんじゃないの!?」

「な、何ィ!?」




「いや、俺だっ!」

ゴンッ

「「お前かよ!!」」


「だって飲ませたらあいつおもしれーからよー」


ナミとウソップが鬼のような形相でルフィをどついている間に、私は記念すべき今日一番目のターゲットを見つけた。


寝ているゾロに気づかれないよう、ソロリソロリと忍び寄る。

んふふー、寝てる寝てる。

人差し指でトントンと頬っぺたをつつく。

「ゾーロ、おはよぉー」

「あー?起こすな─────ッ!」


起きた瞬間、あつーいキッスをお見舞いする。

ゾロは目をこれでもかと言うほど見開き、勢いよく起き上がって私をそのまま遠くにぶっ飛ばした。どうやら目はバッチリ冴えたみたいです。
うへへ、おはよぉーござーいまーす。


「オイ、誰だこいつに酒飲ました奴!!あいつはキス魔になるっていい加減学習しろ!」

「「こいつです」」


ナミとウソップが二人でルフィの体を両手で押して、ゾロの前に差し出す。


「うっひゃっひゃ!あー面白ェ!」

「…まじてめぇ斬るぞッ!!」


先ほどゾロにぶっ飛ばされた体勢を起こし、あっちでぎゃあぎゃあやってるルフィ達をニヤニヤしながら眺めて、本日二人目のターゲットをキョロキョロと探す。

あ、居た居た。

…だけど絶対あの人はキスさせてくれない。いくら寝込みを襲おうとしても、不意打ちを狙っても、引っ掛からない。必ず交わされるのだ。


「よぉーし!今日こそ」


酔っぱらってフラフラの足を、ターゲットの位置まで忍ばせる。

ターゲットは現在洗い物をしている模様。よし、驚かせてビックリした隙を狙ってやろうではないか。みておれ、あいつめ。


「わっ!!!」

「……………。」

「あ、あれぇー?」

「だから、キスなら俺はしないしその手には引っ掛からないって」

「なーんでー!」


まただ…。

驚かせたのにも関わらず、淡々と洗い物をこなす彼。また今日もキス出来なかったか。何でなんだろう。いつもサンジだけは、絶対にキスが出来ない。


「もういいもーん。違う人にするもーん。ロビーン!うわっ、」

「ちょっとこっち来い」


ターゲット三人目、ロビンの元に駆け寄ろうとしたら急に腕を捕まれ、そのまま引っ張られてキッチンから連れ出された。


「なーにー?なんなのー?せっかく次はロビンにキスしようと思ってたのにー」

「あのなぁ…、キスってのは本当に好きな奴にしかしちゃ駄目なんだよ」

「はー?意味わかんなーい。皆好きだもん!」

「はぁ…、お前本当のキスしたことないだろ」

「本当のキスぅ!?なにそれー、ひゃはは」

「教えてやるよ、本物のキス」


サンジの顔付きが急に真剣になり、両手で顔を押さえられたかと思うとキスをされた。

なんだ、これならいつもの私がやってるのと同じじゃん。それよりさっきまで洗い物をしてたからサンジの手冷た…………ん?

な、なななな、ナニコレ!


何か舌が、舌が入ってきたよ!助けておかーさーん!ナニコレナニコレ!

頭がぼーっとしてくる。サンジは角度を変えて、何度も何度も舌を私の舌に絡ませた。こんなの初めてで、息をするタイミングも解らない。何だろう…今までのキスじゃ感じたことない感情が湧く、気持ちよくて、何だか凄くドキドキする。



「こういうのだよ、本物のキス」

「な、にこれ…何か凄い…凄すぎてよくわかんな…」

「ん?だから、これが好きな人にする特別なキス。ていうかお前酒臭い」

「へ?好きな人って…、え?」


あんなキス、したことない。ビックリしすぎてすっかり酔いも覚めてしまった。

「これから他の奴にキス禁止」

「え?え?え?」

「俺とだけ。いつでもさっきのキスしてやるよ」





私が次の日からサンジ専属のキス魔になったのは、言うまでもない。








キス魔だから
(される方も嫌だけど見てる方もうぜー事に気づいた)
(なにー?ゾロもまたして欲しいのー?)
(またぶっ飛ばされてーのか)




企画サイト「アンソロジー」様に提出させて頂きました。素敵な企画をありがとうございました。




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