君の瞳に映る僕以外の僕



僕は死んだ。
ほら、そこに真っ赤になった僕の入れ物が転んでるでしょう。

憑依弾などではありません。
僕としたことが、任務で失敗しました。


そしてその入れ物の隣にいるのが僕の彼女。

彼女は咽び泣くでもすがりつくでもなく、ただきょろきょろと空を見渡している。


あぁ、僕の存在に気が付いてるんですね。
未練がましくもこの世にすがり付いている僕の。

しかし、そっちじゃない。ここです。
僕はほら、君の目の前にいるじゃないですか。


「   」
「!」


そっと名前を呼ぶとセンサーみたいにぴくんと反応して目を見開いた。
そしてしっかりと、僕を見た。

あぁ確かに僕を見ました。
君の眼球には映ってはいないが、君は僕を見てくれた。


僕はどんな姿でしょう。どんな顔をしてるのでしょう。

あぁもどかしい。君が泣いているのに、こんなにも近くにいるのに、
抱きしめてあげられないなんて。

君の嗚咽が止まらない。
堰を切ったように溢れた雫を受け止めることも出来ない。


いっそ誰かに憑依してしまおうか。
ほら、あの男なんてどうでしょう?
僕には劣るが、なかなかいい男のようですし、彼女は絶対僕だと気付いてくれる。



もう一度、名前を呼んだ。
僕じゃない音で。
彼女は振り返って入れ物の変わった僕を見た。

少し間を空けて僕を呼んだ。
あぁやはりわかってくれたんですね、君なら気付いてくれると信じてました。

頬に伝う涙を拭う。そのままやさしく抱き締める。

泣かないで下さい、すみません、愛してます

言葉を並べる。やはり違うおと。


私も愛してる。
彼女は返してくれた。彼女の音で。


眼球に映っているのは僕ではない。


もうさよならだ。

また文字を並べて言葉を告げる。


たとえ中身が僕であろうとも、僕以外の男に微笑み掛ける君を見るのは気分の良いものではないようです。


なので、
待っていますよ。

輪廻の果てで。








――――
希紗ちゃんに捧げます。

大変遅れて申し訳ない。
内容無くて申し訳ない。
解りにくくて申し訳ない。



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