雨来い
「雨、かぁ」
「貴方が雨男だからでしょ。」
「だとぉ！？」
口喧嘩。
最後の日だってのに最悪だぜぇ…。
しかも天気までもが不機嫌に降り注いでいやがる。
「ったく…てめぇと出会ってから雨続きだぜぇ」
「なによ私のせいだって言うの？」
別にんなこと言ってるわけじゃねぇ、
ただ雨が多いって言っただけだろぉ
そういやぁ出会ったあの時も雨だった。
確か傘を忘れたコイツに俺が貸したんだっけなぁ…
あの頃は、素直になれた。
最近じゃあ顔を見りゃあ素向けちまうし、口を開けば捻くれた事しか言えねえ、そりゃあ口数も減るよなあ。
そんな俺に呆れたんだか嫌気が差したんだか、距離が離れて行くのが目に見える様にはっきりしていた。
だから、
もしコイツが、ヴァリアーに来てくれると、ついて来てくれると言うなら、
またあの頃みたいになれる気がして。
もちろん、簡単な場所じゃない。命を落とす危険くらい理解してる。
でもコイツを守る自信はあった。守れると、そう思ってたし、コイツもそう思ってるんだと思ってた。
それでもコイツは無理だと、そう言ったんだぁ。
それが意味するのは、必然的に別れの道で。
「ここまで、だなあ」
「…そうね、」
校門を挟んで向き合う。
卒業の時期には少し早ぇなぁ。
雨がこんなにも冷てぇから。
一歩、一歩、一歩。
お前の傘から遠のいて行く。
「お前の事、結構好きだったぜぇ」
似合わねぇ程の小さな声は、
大きな雨音に隠されながらもお前の鼓膜を振るわせられるだろうか。
一歩、一歩、一歩。
お前との距離に比例して、雨音がだんだん遠のいて行く。
「 」
俺より小さな声でお前が何か言った様だが、さらに小さな雨音がそれをかき消した。
一歩、一歩、一歩。
不意に振り返った視界には、完全にお前は見えなくなって
代わりに青空になっていた。
「やっぱり雨女はお前じゃねぇかあ」
ぽつり
雨なんざもう降ってねぇ。
雨が降ってたら、誤魔化せるんだがなぁ。
視界が悪りぃのだって雨のせいだっていえるんだぁ。
「雨、ふらねぇなあ」
お前がいねえと傘も貸せねえ、
「雨、降らねぇなぁ…。」[ 5/6 ][＊prev] [next＃]
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