「知りたいわ、ねぇ、アナタは死んだらどうなるか、知ってる?」


また来た。白い耳をぴくぴくさせて俺に問いかけたそいつは、楽しそうにくるくると旋回する。


「死んだことないから、俺にもわからないなあ」

「でしょ?やっぱりそうよねえ。一回死んでみようかしらワタシ」

「死んだら二度と生きれないぞ」

「あら、だったらどうすればいいかしら」


まるで人間のように首を傾げてそう言う彼女は(これも彼女かどうかわからない。なので俺の中での一般的な一人称に合わせて彼女を呼ばせていただく)、ふふふ、と可愛らしい声で笑う。白い彼女は空中を舞う。


「なんでまた、そんなことが知りたいんだ?」

「だって、体験したことが無いんだもの」

「生きてたら、死ぬ体験なんてできないだろう?」

「そうね、そうだわ」


くるり、と一回転。


「死ぬというのは、生まれると一緒で一生に一度しか体験できないものだわ。でも理不尽よねえ、生まれるときも死ぬときも、私たちに感想を考える間もなく終わってしまうんだもの」


彼女が考えることはいつもわからない。この間は「ヒトはなんで二足歩行なのかしら」だった。サルから進化してこうなったのだ、と教えると、「じゃあなんでキリンは四足歩行なのかしら、二足歩行になれば高い木の草なんてすぐむしれるのに」と言う。彼女の終わらない疑問は続く。10の疑問のうち解決できるのはだいたい1くらいだ。そして考えるのに疲れたら眠る。そしてまた次には違う疑問が浮かんでくるのだ。きっと神になればわかるであろうという途方の無い疑問から、なんでそんなことを考えるのだろう、という意味のない疑問まで。彼女の「疑問が解けない」という疑問は続く。


「ねえ、ソウ。ワタシ、一回死んでみたいわ」

「俺はやだな、モモが死んだら悲しいから」

「あら、どうして悲しいの?」

「友人だからだよ」

「ヒトでないのに?」

「種族は関係ないさ」

「あらまあ」


嬉しいわ、でもなんでかしら?疑問が絶えない彼女との会話はくだらないことから哲学的なものまで様々で時々面倒くさいこともあるけれど、彼女のその純粋さは嫌いじゃない。死んでしまったら困る程度に、彼女は大切だ。



05.知りたがり
(知的好奇心の強いウサギ)(蝿みたいな羽があるけど)


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