■Sweet Rose/セネル×リッド(徠弛様)



『Sweet Rose』

擦れ違い様に、彼の腕を引いて―――抱き締めていた。





「…セ、ネル…?」

「クククククーリッジ!?!?」

「お、お兄ちゃん?」



リッド、クロエ、シャーリィに呼ばれて気が付いた。

俺―セネル・クーリッジ―は仲間のリッド・ハーシェルを抱き締めていた。
無意識に彼の腕を引いて抱き締めた様だ。

「セ、セネル…?あの…」

腕の中のリッドが恐る恐る声を掛けてきて、ハッと我に返って慌ててリッドを解放した。

「す、すまないリッド…っ。」

「あ、いや、別に…。」

改めて向き直り謝罪すると、リッドは戸惑いながら苦笑いを浮かべていた。―まぁ当然の反応だよな。

「どうしたんだ?クーリッジ?」

「………………」

「お兄ちゃん?」

何で俺はリッドを抱き締めたんだ?
確か、三人で修行に行こうとホールから出ようとしていたら、リッドが甲板から艦内に戻ってきて…少し会話をして……――


『あれ?お前らドコか行くのか?』

『あぁ、少し修行にな。』

『リッドさんも一緒に行きませんか?』

『やめとく。腹減ってるし面倒だし。』

『まったく、ハーシェルは…。』

『ふふっ、相変わらずですね。』

『じゃ、頑張れよ。…怪我しない様にな。』

『あぁ、分かってる。』


そう言葉を交わして、リッドは食堂へ、俺達は外へ向かおうと擦れ違った―――はずだった。


「…えっと…よく分かんねぇけど、オレ腹減ってるから、…その…またな!」

「あ、あぁ、またな、ハーシェル。」

「今度は一緒に行きましょうね!」

俺が考え込んでいる間に、今度は本当に、リッドは俺の横を通り抜け食堂へと消えて行った。
その、俺の横を通る時、フワッとリッドから甘い花の様な香りがした。

……そうだ、リッドから

「イイ匂いがしたから…」

「「え??」」

「あ、いや、何でもない。そろそろ行こう。」

「う、うん…っ。」

シャーリィとクロエは顔を見合わせて首を傾げていたが、特に何も聞かずに着いてきたから、俺も何も言わずに外へ出て修行へと向かった。

そう、あの時リッドと擦れ違い様にフワリと香った甘い花の様な匂いに、思わず彼の腕を引いて抱き締めてしまったんだ。
意外な香りにも勿論驚きだが…抱き締めてみて、改めてリッドの躯は細く、がっしりしている様で少し華奢な印象を受け、前々から細いとは思っていたがこれ程とは…と少し驚いた。
華奢…は言いすぎかもしれないが、あの香りの所為か、何だか儚さまで感じた様に思う。

彼の腕を引いた手のひらを見つめ、握っては開いてを何度か繰り返した後グッと強く握り締め

―リッドを守りたい―

何故だかそう強く思った。

シャーリィを"守る"とはまた違う"守りたい"と云う気持ち…。
そして気付いた。
あの細い躯に細い腕で剣を振るい、ふと時折寂しそうな瞳で遠くを見つめている彼を――自分はいつも何気なくも見ていた事に。
そう気付くと、リッドの事が気になって仕方ない。彼について、きっとまだまだ知らない事が多いだろうし。


だがまずは、今日の修行に集中しないとな!
気合いを入れ直して、俺達は修行に励んだ。



―――――


一方、セネル達と別れ食堂に入ったリッドは…


「(な、なんなんだよ、セネルの奴…っ!?)」

顔を赤く染めながら扉の前で暫く踞っていた。

何故リッドから花の様な香りがしたのか――

――昨日の夜、

『あっ、シャンプー切らしてるの忘れてた…。』

依頼を終えてバンエルティア号に戻ってきて、風呂に行こうと準備をして思い出した。前の日に、シャンプーを使い切ってしまった事を。

『リッド、新しいの買ってなかったの?』

『今日買いに行こうと思って、依頼してたらすっかり忘れちまったぜ…。』

『あっ、ならコレ使う?この間買い物に行った時に試供品貰ったんだよ。』

ファラは「はい、コレ」と机の引き出しから取り出してきたシャンプーの試供品を渡してくれた。

『サンキュー、ファラ。』

『後で使った感想聞かせてよね!』

そう言ってファラは部屋を出て行き、リッドは風呂へ向かうべく部屋を後にした。


――風呂上がり、


『リッド、すっごくイイ匂いするね!』

『さっきのシャンプーだよ。…たしか、【スウィートローズの香り】って書いてあったぜ。』

『へぇ〜。あ、仕上がりはどう?』

『しっとり…でもサラサラしてて悪くはねぇかな。…オレにこの香りは似合わねぇけど。』

『そんな事ないと思うけどな♪…うん、香りもイイし、確かに髪もイイ感じみたいだね!わたし、今度からそのシャンプーにしてみよっと♪』


――と云う事だった。



「(…セネルって、見た目よりもがっしりした躯してるんだな…。力強くて、でも優しい腕だったな……ってオレ何考えてんだ!?)」

リッドは、自分の考えに更に顔を真っ赤にすると軽く頭を振って落ち着こうと息を吐いた。――が、

「あっれェ〜〜?リッどん真っ赤な顔してどったのぉ〜?てか、セネセネ達知らな〜い?」

「っ!?…な、何でもねぇよ!!セ、セネル達なら修行に行ったよ!」

扉から顔を覗かせたノーマにビクッと肩を震わせ立ち上がると、焦りながらそう告げて赤い顔のまま食堂から飛び出て行った。



―その後、この一件からセネルとリッドがお互いに意識をし合い、気持ちに気付くのはもう少し先の話…―



END




おまけ


「ふふっ、やっぱりお兄ちゃんって、リッドさんの事が気になるみたいだね♪」

「そ、そうなのか!?」

「いつもリッドさんの事見てたみたいだし…。二人の事応援しようね、クロエ!」

「えっ、あ、あぁ…。」

「うまく行くとイイな〜♪♪♪」

セネルの後を着いて行きながら、シャーリィは嬉しそうに、クロエは複雑そうにコソコソとそんな会話をしていたと云う。






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シャンプーはS●L●のピンク色の方です。個人的にこの香り好きだなと。
そして思い付いた話でしたwww
ありきたりな話ですみません。


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