■究極の独占欲?1(クレリド)
Myディセミナトも名前のみ一瞬登場
微黒/ドS気味/鬼畜と三拍子揃ったちょっと暴力的なキャラ崩壊クレスさんが居ます。
嫌な予感がした人は今すぐ逃げましょう。



「それじゃ、二人にはこれをお願いするね」
「随分立派な入れモンじゃねーか」

ホールカウンタに立つアンジュが、なにやら豪奢なケースを取り出してテーブルに置いた。
スパーダは帽子を軽くかぶり直しながら彼女の手元を覗き込み、リッドは両手を頭の後ろに組んだまま目線を下ろす。
濃い茶色のそれは各所にくすんだ金で装飾が施されており、トランクのように持ち運べる仕様になっている。
さほど厚みのない代わりにある程度の、クエストを受ける二人には馴染みのある長さがあった。

「中身は剣・・か?」
「ご名答、リッド君」

リッドが尋ねると、アンジュは頷いてケースの止め具を外す。
中に収められていた剣はかなり特徴的な形をしていた。普通の片手剣に比べて若干刃幅はあるが、大剣というほどでもない。
しかし柄と刀身がほぼ一体になっており、赤味がかった銅色が鈍い光を放っている。
刀身の両側から曲がった刃が枝のように突き出していて、その様はフランベルジェの一種を思わせた。殺傷能力はかなり高そうだ。

「ヘンな形だけど、中々の剣だな」
そう言ってリッドが剣を手に取る。
「これを移送してもらうのが、今回の依頼だからね。貴重な品らしいから傷つけたり壊したりしちゃ・・」

アンジュの言葉の最後は悲鳴となって掻き消えた。
突然、リッドが剣の切っ先を彼女の喉元に突きつけたからだ。
状況を把握する間もなく、驚きと恐怖がない交ぜになった表情でアンジュは動けなくなる。
たった一つ息を呑むだけで、その刃に切り裂かれるような錯覚さえ覚えた。本能的恐怖に、彼女の身体が勝手に震え始める。
すぐさまスパーダが己が双剣を引き抜き、向けられた刃を刃でやや強引に逸らして、二人の間に割って入った。

「おいおい急にどーしちまったんだよ、冗談にしちゃ笑えねーぜ?」

口角を上げながら軽口を叩くが、スパーダは突き刺さる殺気にたらりと汗が背を伝うのを感じた。
かなりの力で押し返している筈なのに形勢を逆転出来る気がしない。アンジュを庇うので精一杯だ。
感情の無い青い瞳が鋭くこちらを射抜く。一瞬でも目線を離したらやられる、そんな確信を嫌でもさせられた。




「おいおいこりゃどーいうこった」

ホールから大きな物音が聞こえ、様子を見に行けばただならぬ光景が広がっていて、ユーリは思わず手に提げた相棒を握りなおした。
カウンタテーブルがひっくり返り、そこへ突っ込んだのであろう負傷した肩を押さえるスパーダと彼を支えるアンジュ、そしてそんな二人に剣を向けるリッドの姿

「リッ・・ド?一体どうしたんです・・?」

ついてきたエステルが震える手を口元にやりながらそろりと尋ねる。本当に、リッドなのかと
誰の目から見ても彼の雰囲気がおかしいことは明らかだったが、エステルはもっと直感的な部分で何かを感じ取っているのだろうか
そもそもリッドが訳も無く仲間を傷つけるなど考えられないし、何より

(あれは---------人を殺す意思を持った目だ)

ユーリの身にぞくりとした嫌な予感が走る。
兎角原因が分からなければ手の打ちようがない。まさかその理由が本当に、リッドが仲間に危害を加えようと思ったから・・とは出来れば考えたくない。
ディセンダーであるミナトが居れば、エステルの感じている"何か"がもっと確実に掴めたかもしれない。が、生憎と彼はクエストで艦を空けている。
一体何の騒ぎだと、ギルドメンバーの数人が自分達と同様にホールに顔を見せた。
同時にゆらりとリッドの身体が動き、剣先が閃く。

「!---全員伏せろっ!!」

リッドの挙動に気付いたユーリが短く叫ぶと、隣のエステルを自身を盾にして伏せさせた。次の瞬間放たれた斬撃が背後の壁を抉る。
庇われたエステルがそっと目を開けると、ユーリの右袖が破れ血が流れていた。

「ユーリ!腕が・・」
「ドジっちまったぜ・・大したことねぇ、かすり傷だ。それより・・」

幸いユーリの警告に反応した他の面々は無事のようだ。
しかし皆が一様に、今攻撃をしかけてきたのは、間違いなくリッドだったのかと驚愕を顔に貼り付けている。
驚きを共にしながらも普段通りの冷静さを失わないすずが、何か思い当たる節があったのか、まさか・・と小さく呟いた。

「聞いた事があります。手にした者の意識を奪い取る呪いの剣の話を」

一同の視線がリッドの手にする剣へと向かう。
スパーダに治癒を施しているアンジュに出所を尋ねると、移送依頼の品だと返答がきた。
呪いの剣なんて眉唾物の話だが、それが本当ならばリッドの突然の行動にも説明がつくかもしれない。いや、せめてそうであってほしい。
今仲間に剣を向けているのは、彼の意思ではないのだと
壊れたクエストカウンタに背を預けるスパーダも、リッドは剣を手にして急にああなったと息絶え絶えに状況説明を添えた。

「もしあれが本当に呪いの剣だって言うんなら、一体何の目的があってこのギルドにそんなものを・・」

持ち主は呪いのことを知らず所有しているのか、それとも知るが故に企みがあってこのギルドに持ち込んだのか、はたまた移送先で何か謀(はかりごと)を起こすつもりなのか
キールは顎に手を当てて考えられる可能性を挙げていくが、スタンがそれを遮った。

「今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ!兎に角リッドからあの剣を取り上げないと、」

その時、ホールの中央に佇むリッドに向かって剣を構え、音も無き速さで飛び出していく姿があった。
纏った赤いマントが翻る。

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