■未成年の主張(ルクリド)

月曜の朝というのは眠いものだ。
加えて校庭に全校生徒が集合させられ、校長の長く退屈な話を延々と聞かされる「朝礼」という恐ろしいイベントがあったりする為に、貴重な睡眠時間は更に削られてしまう。
眠気眼を抱えたまま生徒の列に並んだリッドだったが、彼の眠気はある人物の、思いも寄らぬ行動で吹き飛ばされることとなる。

校庭に整列している生徒達の前に姿を現したのは、かの有名な(どう有名なのかは此処では割愛する)ファブレ家の息子、ルーク・フォン・ファブレ。
何故か屋上に登場した彼の存在に生徒達が気付き、ざわめき始めたその時、彼は大きく叫んだのである。

「リッドーーーーーーーーーーーーー!!!」
「うぇっ!?」

生徒らがざわめいても、自分には関係ないことだろうと、ぼーっと朝礼の終了を待っていた(まだ始まってもいないが)リッドだったが、まさかの展開に肩を揺らして驚く。
何が何だか分からず慌てるリッドの心境を他所に、ルークは屋上の欄干に可能な限り身を乗り出し、目を閉じて、大きく息を吸った。そして・・


「俺、2年A組ルーク・フォン・ファブレは!!3年E組リッド・ハーシェルのことが・・!」


瞬間、風が止んだ。
誰もがこの世界の何もかもから切り離され、全ての音が遮断された様な錯覚に陥った。



「好きだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」



静寂の後に訪れるもの。それは地面を揺るがしかねない生徒たちの叫び。
ルークの発言がもたらした衝撃は相当のものであった。
無論、告白を受けたリッドも例外ではなく、いや周囲の視線やら何やらで、今ここに居る人間の中で最も衝撃を受けているのは恐らくリッドであろう。

だが、ルークの行動はそれだけでは終わらなかった。

「俺、変わるから!」

そう叫ぶと、いつの間に手にしていたのか、銀の鋏をおもむろに髪に入れる。
朱色の長い髪はバッサリと切り落とされ、ルークの手に収まった。

「だから、付き合って下さい!」

そう言って頭を勢いよく下げ、勢い余って欄干に額をぶつけるルーク。
距離がある為、その音が校庭に居る生徒らに聞こえ伝わることは流石になかったが、彼の表情から察するに相当痛かったのだろう、額を押さえてのた打ち回っている。
一方、全校生徒が見守る中、当事者であるリッドは完全にフリーズしていた。
余りの出来事に混乱を尽くした末、視界がフェードアウトしていく様がリッドの最期の記憶だった。



「はっ」

気が付くと、そこは見慣れぬようでどこか見慣れた天井。
薬品のニオイと耳に入る窓の外からの声で、ここは保健室か、と取り合えず頭が働き始めたのをリッドは感じる。
だが、何故自分はここのベッドで眠っていたのだろうか。
記憶を辿りきるその前に、視界に焦った表情のルークが飛び込んできた。

「リッド、起きたか?大丈夫か!?」
「ルーク、フォン・ファブレ・・」

自分を心配するルークの姿に違和感を覚える。そう、髪が短くなっているのだ。
そして、何故ルークが短髪になっているのか、つまり朝礼前の出来事を、リッドは全て思い出した。

「!!??!!?!?!??!!?」

リッドは言葉にならない叫び声を上げて後ずさった。
だが決して広くない保健室のベッド故、直ぐ壁に背がぶち当たる。
ルークはそんなリッドの反応に目を丸くした後、さっと青ざめる。

「や、やっぱり打ち所が悪かったのか?大丈・・」
「待って!、・・くれ。そ、それ以上近づかれると・・」

心配顔で表情を覗き込もうとするルークに、リッドは静止を求める。
そしてシーツを手繰り寄せ、己の顔を隠すように頭からすっぽりと被ってしまった。
シーツにリッドの姿が隠れてしまうその直前、ルークの目が捉えたものは、これ以上無いという程に赤くなったリッドの顔。

「リ、リッド・・・?そんなに、嫌だった・・?俺に告白されたの・・」

ルークは戸惑いながら声を掛ける。
リッドに嫌われたかもしれない、そう思ったからだ。そう思える要素は幾らでもあった。
殆ど面識がないにも関わらず、唐突な告白。しかも全校生徒の前で。我ながら思い切りが良過ぎたのかもしれない。
そして当の本人に近づくことを拒まれたということはやはり・・・とルークは顔を曇らせる。
あからさまに落ち込んだ声に、リッドはおずおずと少しだけシーツから顔を出した。

「そ、そうじゃなくて・・その」
「その・・?」
「こんなこと・・初めてで、どうしたら良いか分からない、んだ。だから嫌とか、そういうのも、全然分かんなくて・・」

ルークのことも、オレまだ全然知らないし・・そうリッドが言い終る前に、ルークは腰掛けていた保健室のベッドに上靴を脱ぎ捨てて飛び乗り、勢いのままに土下座した。
本日何度目か知れないが、リッドはまたまたルークの突飛な行動に度肝を抜かれる。

「なら!嫌じゃないなら!今振らないで!!お、俺と付き合ってみて考えてほしいんだ!!そういう形のスタートだってアリだって思うし!」

お願いします!!!とここが保健室であることすら忘れて叫ぶルーク。
余りにも必死なその姿に、リッドも隠れるのを忘れて呆然としてしまう。
二人の間に静寂が通り過ぎて、幾分か、幾秒か。
ルークは、恐る恐るシーツから顔を上げる。

白いシーツ、白い保健室に良く映える、自分とは異なる赤い頭、真っ赤になった顔が、小さく縦に振られるのを、ルークの瞳は捉えた。
それが、答えだった。

感極まって思わずリッドに抱きついたルークが、混乱したリッドから右ストレートを頂戴してしまうのは、このすぐ後の話。
--オワリオワリッド--
すっごい昔の書きかけを引っ張ってきました(流石に文章は色々修正しましたがw)
どれくらい前だろう・・覚えている人居ますかね?初代アンケの頃に言ってたことwww
やりたかったのは、未成年の主張的告白と断髪なので、前後関係は全くありません(キリッ
このネタ好きなんですよね、他ジャンルでもやったことがあったりなかったり(笑)
ルークがなんでリッドを好きになったのかとかそこらへんの経緯はお好きに妄想して頂ければなのですが、取り敢えず二人は顔見知りとかそういう訳じゃなくて、なんかあってルークが一目惚れみたいな感じで、でも一応初対面ではない・・我ながら曖昧すぎるぞ・・!(涙)
シチュエーション先行で行くとこうなるという悪い例です、皆様は真似しないでね!←

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