■賽は投げられた(ユリリド)

「おーいリッド、暇ならダイスアドベンチャーでもやらないか」
「ダイスアドベンチャーって、今バンエルティア号中で流行ってるアレか?でもオレ、腹減っててそういう気分じゃねーんだけど・・」
「なら俺に勝ったら、俺が何か飯作ってやるってことでどうだ?」
「のった!」

テーブルにマス目の書かれた紙を広げ、サイコロを振り、出たサイコロの目の数だけ自分の持ち駒をゴールへ向け進めていく。
ゲームとして、そこまで難解という訳ではないのに、リッドは窮地に立たされていた。
「幾つだ?」
「・・3」
駒を進めてマス目に書かれた指示を見た後、リッドはがくりと膝を折る。
ぶっちゃけユーリの手料理に釣られて安請け合いした数分前の自分を殴ってやりたい。
「どれどれ・・、ほーなるほどな。んじゃ早速やってもらおうかね」
ユーリはニヤリと笑い、ソファに深く座り直した。
マス目に書かれた指示は『対戦相手の膝に座り、キスをする』
無論この内容にもリッドは愕然としたが、彼が身を震わせている理由はこれ1つではない。
このゲームを始めてからというもの、リッドの駒が止まるマス目の指示は常識外れのものばかりだったからだ。

最初のマスは『対戦相手に「好き」と言う』
素直に好意を示すことを余り得意としないリッドにとっては、初手の関門からして高すぎるハードルだった。
ユーリからすれば顔を真っ赤にして、酷く居心地の悪そうな表情で、告白と違わぬことをさせられるリッドの姿は、見ていて口元を緩めるなという方が非道だろと思ってしまうものだったが、しかし折角のチャンスを逃さぬよう、そこはそ知らぬ顔をする。

「オレ、は・・ユーリ、のことが・・」
「俺のことが?」
「・・やっぱ、言わなきゃダメか・・?」
「そういうルールだからな。それに、俺はいつもリッドに言ってるけど、リッドからは殆ど言われたことねーよな?」
「それは・・っ・・ユーリだって、知ってるだろ、オレがそんなこと言える様な性質じゃないって・・」
「まあな」
「んな、恥ずかしいこと・・」
「でも、たまには俺もリッドの口から聞きたい」
「っ、そんなの、ズルいぜ・・」
「俺はお前が好きだ」
「・・・っ、・・オレ、も・・『好、き』」

満足気な顔をすると、ユーリは「よく出来ました」と言ってリッドの真っ赤になった頬に手を添える。びくりと身を縮める様もまた愛おしい。

しかしこれはリッドに襲い来る困難の、第一段階に過ぎなかった。
次のマスの指示は『対戦相手の指定した服を脱げ』
ユーリが何処を指定したのかと言えば、今のリッドの格好を見れば一目瞭然であろう。
室内に居る為、靴は脱いでいるし、手甲やグローブも外されている。そしてただでさえ布地の少ないリッドの服装、とすれば・・
「そりゃズボンだろ」
「!?」
そういう訳で、リッドの健康的に引き締まった足は現在ユーリの眼前に惜しげもなく晒されている。
腰に残された布地を掴んで抵抗を見せるが、それが無意味なことくらいリッド本人も分かっていた。

そして、今回の指示内容である。
リッドの羞恥心はとっくにリミッターが振り切れており、完全に涙目になっているが、それはユーリを楽しませる要因に他ならない。
「どうする?リタイアするか?」
一方ユーリの駒が止まるマスの指示内容と言えば『2つ進む』だの『1回休み』だの至って普通のものばかりで、リッドは非常に納得がいかなかった。
「オレ呪われてんじゃねーの・・」
「愛の力と言いなさい」
そう言ってユーリは笑い、リッドは人の気も知らないで・・とその余裕面を睨み付けた。涙目で睨んでも全く効果がないことなど、知らぬのはリッド本人だけである。
「そういや俺が勝った時どうするかって決めてなかったな。リッドだけ得するってのはフェアじゃねーよな?折角だからこの機会に前々から思ってたアレやらコレやら、やってもらおーかねぇ・・」
実に楽しそうに語るユーリの姿にリッドは戦慄した。
既にもうこれ以上無いという程の恥ずかしさに襲われているのに、ユーリを勝利させてしまったら一体どんなことをさせられるのか、想像したくもない。
リッドは、涙に涙を重ね、文字通り泣く泣くリタイアを断念した。

「んじゃ、ほら」
「・・・っ」
普段では考えられないような頼りない歩みで、リッドはユーリにそろそろと近づいていく。
そんなに距離がある筈もないのにとてつもない時間を掛けて、一歩一歩、だが抵抗虚しくユーリの膝(?)がリッドを出迎える。
ゆっくりとゆっくりと、ユーリの肩に手を置いて支えにして、決死の覚悟でリッドはユーリの膝に跨った。今なら恥ずかしさで死ねる。
「キスは?」
「ぐっ・・」
「それも指示の内だろ?リタイアか?」
「わっ、かってるって!もーヤケクソだ!!」
リッドは己の唇をぶつけるように、勢い任せでユーリの頬に口付ける。
「なんだ、ほっぺか」
「キスはキスだろ!」
「ハイハイ、まぁ頑張ったからよしにしといてやるよ。あと暫くこのまんまな」
「はぁ!?」
「逃がさねぇぜ?」
ユーリの上から立ち退こうとした身体を力強く抱き寄せると、リッドはくっ・・と悔しそうな表情を滲ませた。
「さ、お前の番だぜ」
ニヤニヤと笑うユーリの横っ面を叩いてやろうか、そんな気持ちを呑み込み、意を決してリッドはサイコロを振る。
「・・6だ」
恐る恐る駒を進めていくと、そこには『GOAL』の文字。
予想だにしなかった展開に、一瞬ポカンとしたものの、リッドの顔はみるみる内に笑顔になっていく。
「いやったーーーーーーーー!よっし上がりっと!!」
やっとこの苦行から開放される。リッドは心から手にした勝利を喜んだ。
「ま、しゃーねーな、約束は約束だ、なんか作ってやるよ、何が食べたい?」
「肉!オレ今肉の口!!」
「ならハンバーグにでもすっか」
「おう!」

用意した食事を嬉しそうに頬張るリッドを見守りつつユーリはひとりごちる。
自分の傍にリッドが居て、こうやって料理を喜んでくれれば嬉しいし、無論やってみてほしい数々の願望もないではないがそれは追々叶えていけば良いだけのことで


(つまり、俺的にはどっちに転んだって勝ち、なんだよ)
--オワリオワリッド--
ダイスアドベンチャー=すごろくという安易過ぎる発想。別名すごろくユリリド(まんま)
以前memoに書きましたが、兎に角ユーリさんに良い思いをしてほしくてですね(笑)それと安易過ぎる発想が超☆融☆合(そのネタ危ない)
しかし完成に漕ぎ付けるまでかなり時間を要しました。なんだかとても難しかったです。修行が足りんな・・。
多分イチャイチャ書くのが下手+リッドさんが照れすぎ、恥ずかしいがりすぎで前進しないんですよねwってかどんだけ嫌なんだよwwwって書いてるこっちも思ってしまうくらいで、なんかサーセン
イチャラブ書ける方ガチで尊敬します・・

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