感情論 | ナノ



08.みずたまもよう



屋上で初めて話した日から、数日。



校内で神田をよく見るようになった。


元々、女子は2人しかいないので校内でとても目立つのだ。


しかし、今まではどちらかというと
夜久ばかり見かけていたような気がした。



ここ数日、だ。

校内を歩いていると、よく見かけることに気付いた。




ノートをとる姿


眠たそうに机に肘を置く姿


廊下をクラスメイトと歩く姿…





自分の中で1つ1つ


雨粒が落ちるように


心の中の何かがゆれるような気がする。







ほら、また。



俺のクラスは今、抜き打ち小テスト中。


太陽の光が生徒たちに眩しそうに降り注ぐので。


カーテンを閉めようと立ち上がる。






外では体育の授業をやっていた。











「(……っ!!!)」




心臓がはねたのが、自分自身でもわかる。



表情に出てないことを祈ろう。








今までみたことがなかったんだ。








神田が、”笑ってる”







サッカーの授業だろうか。



肩口にかかる程度の髪を短く結わき、

クラスの男子たちに交じって

楽しそうにボールを追っている。





あんな表情、みたことがなかった。



屋上で話しているときも、

笑いはするが、どこか表面的なものだった。



嘲笑的で、さみしそうな笑顔しか、知らなかった。






いつも一緒にいる青空や犬飼は

あの笑顔を知っている………。







自分の中を波立たせる、この感情が分からなくて



断ち切るようにカーテンを閉める。











08.みずたまもよう
(波立つ、ものは)









逸らすように背を向けたから



気付くはずのものにも気付かなかったんだ。




陽の下笑う、彼女にも




窓際に座る、彼にも。






120624

更新遅くて、スミマセン。。。






|→