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 コナン君たら銀行強盗に遭遇したんだって。ついでに見事撃退したと。
 うちでおやつ食べながらさも今日のホットケーキ美味しかったよみたいに言うもんだからへえーコーヒー飲む? とアホ呑気にスルッと返してしまったのがつい先日。
 そんな話を聞いていたので、そのニュースは自然と目に入った。そんでもってちょっと二度見した。

 ――強盗のあったという“ていと銀行“の事件当時の映像に、俺そっくりの男が映っていたのである。
 まさか生き別れの双子やドッペルゲンガーというわけでもあるまい。誰かさんが俺の、というか赤井秀一の姿を騙っているようだ。そういう芸当ができそうな人がいると思い当たるところが嫌だな。
 そんなことして何になるんだ――と言いたいところだが、死人ごっこはその死を知る人物に対してドッキリ大成功できること請け合い、少なくとも各方面にバッチリ迷惑をかけられる。そして俺の目の前でねえ今どんな気持ちと覗き込んでくる嫌がらせだのホラー映像撮影目的程度ならまだしも、これを足がかりに別のものを狙う破滅への輪舞曲だと結構まずい。虫送りでもやるべきか。
 フォーカスされていたわけではない通行人の映像だったので明確にそうと言えることでもないのだが、ともかく事実確認をしたいところだ。

 ひとまず放送後ネットにあったニュースの映像をダウンロードして見た限り、服もマフラーもそこらで売っていそうな無地のもので特徴があるのはキャップくらいだ。
 あんな完成度の顔を作る割にはニット帽でないのに引っかかりも覚えるし、その上それに限定品のロゴマークがついていた辺り、何か作為的なものをひしひしと感じる。しかし放ってもおけない。参った。


「いえ……そのようなお客様はいらっしゃいませんてしたけど……」
「そうですか」

 とりあえずあのロゴマークの入った限定キャップを販売したというていと銀行近くにある米花百貨店の売り場に来て聞いてみたのだが、残念ながら火傷男はその姿を見られていない。
 つまりは“別の何者か”、あるいは“別の姿をした火傷男”が購入したわけだ。発売は最近のようなので所有者はそう変わっていないはずである。経由しても一人二人だろう。

「では金髪の外国人女性は?」
「いいえ、それも……」
「なるほど、ありがとうございます」

 手駒を使ったか、俺の予想の人物じゃないか。
 どうしたもんかねと考えながら百貨店内をうろついている中、なにやら騒がしさを感じてそちらへ行くと、人だかりとその中央にいる毛利探偵とコナン君に蘭さんを見つけた。
 様子を伺うに、毛利氏が依頼を受けてやって来たところそれが爆弾犯によるものだと判明した上さっさと謎と解かねーと爆破すると言われちゃったらしい。有名人は大変だ。ついでにフロアにいる人間が外に出てもボンだと。
 どうもこれ自体は単独の事件のようであるが、ハロウィンパーティーの際一般人を脅しつけて殺しをやらせたという前科があるヤツが、その犯行を示唆し燻る殺意を形にする背を押したというのも可能性がないわけじゃない。

「……」

 同フロアの適当な店に入って百貨店周辺を確認していくと、向かいの道沿いにポルシェ、そのそばにあるホテルの一室から正面入口に照準を定めるキャンティの姿があった。そんな路駐でいいのかお前。そんなサイトでいいのかキャンティ。相変わらずちょっぴりユカイなやつらである。
 囲みがないあたりそこまで大掛かりな行動ではなさそうで、その装備からして個人だろうが目標がわからん。ここにあの子はいないし、毛利探偵だろうか。覚えてたのかあいつ。
 ともかくああいう狙撃の構えをしているなら、少なくとも爆弾騒ぎはメルヘンさん部隊の意図するところではなさそうだ。ソロプレイ厨か完全に無関係な傍迷惑野郎の仕業である。

 騒ぎの中心に戻ってみれば、ちょうど毛利氏たちが推理ショー中だった。
 ここの従業員の父親が雪山の遭難で死んだのは事故でなく今回の爆弾犯による他殺だという事実を、手旗信号を示すTシャツを送りつけて示しあぶり出すことで白日のもとに晒してやりたかったのだとかなんとか。ヒネリがキいてるね。
 それにどよめく人垣の中に俺のそっくりさんもバッチリ確認した。火傷の位置が違うが、ぱっと見てもじっと見ても俺だ。絶対能力進化計画するなら事務所通してくださいよ。ますますポンコツなのが仕上がるだけだと思うけども。

 ともかくその弟(仮)に勘付かれそうになったため離脱しようとしたとき、解放されて流れ出ていく一般客たちの中、短い金髪が揺れるのが見えた。
 そして聞き覚えのある声が耳に届く。

「――待って、シュウ!」

 ――ジョディだ。


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