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 銀髪の幹部、”ジン”に呼び出され、先々一緒に仕事をするからその前準備の任務をいくつかやることになると言われ、ついでに餞別としてAWSMとラプアマグナム弾を貰った。まるでゲームのチュートリアルに出てくる上官みたいである。

「計画や面子は後日通達する。準備しておけよ」

 詳細がわからないと準備しようがないような。

「……ああ」

 とは思ったものの口に出さずにおいた。装備的に長距離狙撃でもやれってことだろうか。
 わざわざ組織所有の施設まで出向いたのに要件はそれだけで、さっさと帰れとまで言われてしまった。
 コードネーム持ちに序列はないと聞いたが、こういう扱いをすることで忠誠心を試したり上下関係叩き込んだりしてるのか、それとも単に銃のやり取りするのにちょうどいい場所だっただけなのか。
 それにしても、”ジン”の姿を見るとなんだかもやもやする。


 この何に使ってんだか分からない施設はなにげに広く、顔は知らないもののまばらに人がいる。出口を目指して廊下を歩いている最中、ふいに横から声をかけられた。

「おねえちゃん、寂しがってたわよ」

 中学生くらいの、栗色の髪の少女だった。
 白衣のポケットに手を入れ、すこし大人びた表情で俺を斜めに見上げてくる。

「ここ最近メールしか出来てないって。そのわりには久々に会ったらあなたの惚気話ばっかりで、ご飯の前にお腹いっぱいになっちゃったわ。けどその彼氏はといえば、恋人のかわりにそんなもの抱いてるんだもの、報われないわね。そっちのほうがお好み?」

 ”おねえちゃん””恋人”……そういえば、明美からのメールに妹がどうのとあった。名前がなんだったかは思い出せないが。

「……いや、ただ、みっともないところを見せたくなくてね」

 と言い訳してみる。
 掌をぴらぴらと振って傷跡をみせると、少女が顔をしかめる。

「女心がわかってないのね。そうやって遠ざけられるよりもそばで心配したいのよ」
「そういうものか」
「まったく、物分りのいい女をしていると、男はすぐに調子に乗るんだから。こんな男よしたほうがいいって、そうお姉ちゃんに言ってやろうかしら」
「手厳しいな……それは勘弁してもらいたい。彼女に振られたくはないのでね」
「てっきり、コードネームを貰ったら、その野暮な目にはお姉ちゃんの魅力なんて霞んでしまったのかと思ったわ?」
「彼女はとても素敵な女性だ。俺にはもったいないくらいな」

 明美の妹は険しい表情で挑戦的なセリフを言うものの、その瞳は不安げな子供のものだった。
 姉を心底心配しているらしいことがわかって、申し訳ない気持ちが湧く。ちょっとよくわからないから会いたくなかったなんて言える雰囲気ではない。

「……お姉ちゃんを、大事にしてあげて」
「もちろんだ」
「あの人、無理するし、無茶するの。自分を差し置いてね」
「……そんな顔をするな。何かあれば、命に代えても守ってやる」

 ううん、少しクサすぎただろうか。


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