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 本堂瑛祐が見つけた手がかりというのは組織のボスのメールアドレスだったらしい。
 プッシュ音を鳴らしてるやつが病院にいたんだと。なんつう情報漏洩マン。ジンさんにOHANASHIされるぞ。
 その事を道中車内で知り、本堂瑛祐が見つけたのは仲間は仲間でも黒い方の仲間だと気づいたらしいコナン君は、病院到着後すぐに看護師に話を聞きに行き、ついでにそれから推察して容疑者を絞ったんだそうだ。
 交代を行って水無怜奈の病室に行ったら深刻な顔をする三人がいて、そう経緯の説明をされた。
 俺が来るまで待っててくれればいいのにこの子ちょっと慌てんぼうなところあるよな。いやジェイムズとジョディの二人がいるんだし別に俺が居る必要はなかったのか。俺はあくまでいざというとき毛利探偵に詫びの自決する要員だった。

 ついでに先程院長に確認してもらったところ、水無怜奈は疼痛刺激でも反応がないため未だ昏睡状態であると言われたらしい。脳波検査は断っちゃったんだってよ。やればいいのに。
 ベッドに近寄って眺めてみると、水無怜奈は身じろぎもせず眠ったように薄く呼吸していて、確かに意識のない人間に見える。

「……」

 しかし一説によればこの彼女、えらいバイオレンスな尋問を受けても一言も喋らなかったという。ド根性で狸寝入りしてるだけかもしれないし――もしかしたら俺と“同じ”なのかもしれんぞ。

「シュウ」

 眼位や瞳孔なんかも見たほうがいいんじゃないかと、水無怜奈の顔に手を伸ばし触れかけたら真顔のジョディに窘められた。ゴメンナサイ。
 すごすご手を引いてポケットに突っ込んだ。セクハラじゃないので痛い視線向けるのよして。

 病院に被害が及ばぬよう、組織に悟られぬよう、容疑者をどうやって突き止めるか――と悩みだすジェイムズたちに「ボクが思いついたいい方法でやってみる?」とコナン君が素敵な笑顔で言い放った。
 別室でやろうという彼に大人しく追従したものの、見張りの部下も一度外に出した上ちょっと聞こえにくい声で忘れ物だのと愉快なUターンしてたもんだから、こりゃあの部屋で大事な話はしないほうが良さそうだ。インセプションでも依頼したいところである。


 “いい方法”は無事採用され、“シンイチ”の友人であるという高校生に出会う以外大したトラブルもなく、ワゴンの中で小学生のほのぼのいたずらムービー鑑賞と相成った。
 Gメンコナン君優秀すぎてちょっと笑いそうになってしまった。むしろちょっと笑った。
 ふ、と息を漏らした瞬間ジェイムズとジョディがバッと俺の顔を見てきたもんで調子乗ったらアカンなとすぐ戻したが。何もしてないくせに呑気に笑ってんじゃねーぞってな。

 ともかく映像を見るに、容疑者三人中一人は純粋な患者、二人は入院してたいだけの仮病のようだ。気持ちは分かるよ、俺も新出医院に住みたい。
 だが更にそのうち一人は組織のネズミさんと。気持ちは分かるよ、俺もチューチューやってた。

 ――そんでちょっと追い詰めたら拳銃自殺しちゃったと。
 その気持ちが分かるのはスコッチくらいだろうな、俺は分からん。

「じき来るでしょうね」
『なんてことだ……』

 舵取りを失い土手からコロコロ転がり落ち破損した車。その運転席で血を流し黙り込んでしまった楠田陸道とやらを眺めつつ、状況をそのままジェイムズに電話で伝えた。
 ナースステーションに入り込んで大胆にバシャバシャ写真取った上、どう見てもコールボタンを掲げつつオレのC4が火を噴くぜみたいなことを言うほど図太い神経してるから大丈夫かもしれないとチラッと思ったが、例に漏れずニンジャだったようだ。いやこっちはサムライなのか。ちょっと繊細チンピラじみてるが。相変わらず組織のケツ拭い教育は徹底してるな。
 自分でやらずともその内ジンが始末の通達してただろうに、今ここで死んでしまうとは情けない。そなたにもう一度機会を与えられたら良かったがそういうわけにもいかん。

 ちょっと残念なゆうしゃさんだがこれまでの日数過ごしていたんだ、少なくともいくらか報告をしているはずだし、それが途切れたらなになに祭りかって仲間が寄ってくるに違いない。
 さすがのコナン君も歯噛みしている。
 携帯水没の刑というファインプレーを無駄にしてしまったしおうふくビンタくらいなら受けるぞ。

「悪いな」

 とりあえず有用そうなグロックを回収して、事故現場の処分を頑張るために俺も仲間を呼ぶかと携帯をいじろうとすると、コナン君が難しい顔をしたまま俺のジャケットの裾を引いた。

「……赤井さん、ちょっと“おねがい”聞いてくれる?」


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