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 なんだか最近ジョディは以前にもましてコナン君と仲良しなようである。
 マダオだという元カレや身近なダメ男にうんざりしすぎた反動でピュアな少年の心に胸打たれたのかな。命を助けられたり一緒に事件に取り組んだりしてたから吊り橋効果もあるのかもしれん。
 エロい人は言っている、小学生だけど愛さえあれば関係ないよねっ!(作中の登場人物はすべて18歳以上です)と。士気が上がって仕事が捗るなら、なにより笑顔になれるならいいんじゃないか。散々世話になってるんだし応援しよう。


 それはさておき、先日そのジョディのダーリンコナン君から電話が来た。
 あの水無怜奈そっくりな少年の父親について知らないかと。そいつはカンパニーの人間かもしらんと。
 コナン君、ジンさんこっち見んな事件から前よりおしゃべりしてくれるようになったのはいいけども、なぜかちょくちょく俺をウィキペディア扱いしてくる。
 無能扱いより遥かにマシだが、アラサーとして小学生にボクチンワカンナイとは言えず、ついでに近頃益々響くようになったあの声で調べてくれと頼まれるとなんだか断れず、結果ちょっと待ってと言いながらあれやこれやと手を伸ばすハメになっていた。人員を遊ばせないデキる六歳。

 つっても流石にカンパニーに知り合いはいないし、あの組織の性質上ビュロウの俺が聞いたって教えてくれるはずもない。
 仕方がないので以前端末に細工をしてくれた技官のツテを頼り、限りなくベッタリ真っ黒なグレーの、ちょっぴりネットワークに詳しい男を探し出し軽く覗き見してもらって、お返しに本部にいる知り合いのお高いスーツ着たオジサマに彼のオイタを勘弁してやってとオネガイをした。骨が折れた。ジェイムズには知れるだろうな。

 少年の父親、イーサン・本堂は確かにCIAの人間だったようだ。かつ組織で潜入捜査を行っており、四年前にキールを尋問して返り討ちにされたんだとか。
 言われてみればそのくらいの時期バーボンあたりとの話に裏切り者がどうのとかいうのがあったようななかったような……ちょっと記憶が曖昧な時期で俺の主観的には定かじゃない。バーボンが裏切り者うんたら言うとどのポジからの発言なんだか分からないし。
 存在自体にはあまり驚きはないな。まあほかにもいるとおもったさ、ガバガバだもの。しゅういち。キールもどうなんだか分からんね。ノック同士のガチファイトだった可能性も微粒子レベルで存在している。
 イーサン本堂が殺害された現場ではアナウンサー似のクレイジーな女がいてヤバいどれくらいヤバいかっていうとマジヤバいみたいな証言もあるようだ。

 ひとまず、コナン君が追加で送ってきた画像の奥に写る男は、確かにデータベースにあったものと同一人物だと伝えた。

『ありがとう、赤井さん』
「構わないが、一人で危険なことをするなよ」

 はあい、と可愛らしい声が耳を打つ。
 オトナとしては首突っ込むなと言うべきなんだろうが、言ったところで意味はなさそうだし、どうにもコナン君のもとにポロポロ重要な情報が入ってくる上せっかく流してくれるようになったんだから、下手に切って伏せられたまま勝手に動かれるよりは連絡取りつつ目の届くところにいてくれたほうがいいだろう。
 子供の身で問題になるのは能力如何ではなく概して保護者と法と世間体だ。そんなん今更だろ。もういいよ、何かあったら俺が責任取ってなんとかするよ。

『報復が目的なのかな』
「本堂瑛祐は姉を捜していると言っていたんだろう」
『瑛祐兄ちゃんにお姉さんがいたのは事実のようだけど、彼女と水無怜奈は別人かもしれないんだ。瑛祐兄ちゃんはO型で、昔お姉さんから輸血してもらったことがあるって』

 コナン君の中では本堂瑛祐の姉を殺し成り済ました女がイーサン本堂に近づいた説もあるらしい。
 しかし似せられる程度の地顔や体型を持つ女を用意するのにも手間と時間がいるし、ネズミ一匹を探るのに整形までするんじゃコスパが悪すぎる。そんなことするよりも“彼女”にやらせたほうが手っ取り早くて安上がりだ。イーサン本堂がどれほどの情報を握っていたかによるものの、あまりそういう手は使いそうにないように思える。
 実の娘が父を撃ち殺したというより考え得るからとのことだが、組織云々抜きにしてもそういうケースはポコポコあるし、殺人事件は大半が身内によるものだからどうかなあ。

「確かに水無怜奈はAB型だが……その少年の血液型というのはどうやって確認した?」
『母子手帳だよ。見せてもらったから幼少時にO型なのは間違いないんだけど――』
「輸血の状況によるか」
『そうなんだ。本人の記憶としては事故によるものだとしても、小さい頃にもケガや病気でよく病院に行ってたって言うから』
「血縁関係の有無はまだ何とも言えないな」
『うん。そして、それによって彼の行動原理も変わってくる。もしかしたら知らずに利用されているのかも――あ、待って』

 慌てた声と同時に通話状態が保留になる。
 なんだなんだ今度はなにがたまたまどんぶらこするんだと暫くの間待っていたら、再度繋いできたコナン君が、本堂瑛祐が杯戸中央病院で父親の仲間を見つけたと言ったきり連絡が取れなくなったらしいことを教えてくれた。また因果律が仕事してる。少しは選べ。
 コナン君がついでに自分も病院に行くと言い出すもんだからこりゃあもう一回何かあるドンだろう。

『相手がCIAとなるとFBIの人たちは顔バレしてるかもしれないし、子供なら警戒が薄くなるでしょ?』
「……迎えを寄越そう。それまでそこに――いや、他がいいか」
『博士の家にいるよ』
「待っていろ」

 現在病院周辺の警戒中だ。俺の時間はもう少しだし、能力を鑑みてエリアと時間帯の割当をしているから、他の持ち場から代わりを呼び寄せて一連の修正をするよりは、今手の空いてる人間を向かわせたほうがいいだろう。
 ジェイムズに確認をして了承を得たので、愛の応援ついでにジョディに頼むことにした。えらくすんなりいったけどもコナン君のアタマ俺より信用されてる?

「……」

 でもアレ。仲間って。仲間なのかそれ。


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