「帰ろ。俺らの家に」
「……うん」
陽射しの暖かい中、ユニフォームを着た長身の少年と、ネクタイを外したサラリーマンが仲良く手を繋いで廊下を歩いていく。
隣を通った優しそうな老人は、手を繋ぐ二人に驚き目を見開いたが、振り返り二人の背中を見ているとその暖かさになんだか笑みがこぼれた。
「ちょ、智っ」
「手は離さないよ」
病院からタクシーで帰ってきた。
タクシーの中でもずっと手は繋がれ離されなかった。
離してくれなかった、とも言う。
「タクシーのおじさん、凄い見てた」
「病院から乗ったんだから、病人って思われてるよ」
「あ、ちょっ」
玄関に入った瞬間後ろから抱きしめられた。
バランスを崩した有志はよろけながら智希に寄り掛かり息を飲む。
危ないから、そう言って離れようとしたらうなじにキスを落とされ驚く。
有志は思わず体を回転させドアにへばりついた。
智希は抱きしめる力を弱めず腰に手を回し何度も有志の首筋にキスを落とす。
チュ、チュッ、と。
間近で聞こえる水音が有志を酔わせる。
ぎゅっと目を閉じているとベルトに手がかかった。
まさか、と有志はベルトを掴み取れない様に必死に力を込めている。
「ま、まだ靴も脱いでないのに」
「そんな時間も勿体ない。本当はタクシーの中ですげぇ我慢してたんだから」
「ちょ、あっ」
体を強ばらせたまま緩めようとしない有志を諦め、今度はシャツに手をかけた。
簡単に外れていく。
「やめっ!」
しかしここで手を緩めれば智希の思う壷だ。
全て開けたシャツに忍び込んでくる智希の手を肘で交わそうと思うが、やはり簡単に侵入される。
「じゃあコッチ触る」
「あっ!」
男の性だろうか、無い胸をゆっくり揉み始めた。
中心の突起にはまだ触れず、女性の様には収まらないがスベスベの胸板を揉み続ける。
「揉まれるの、気持ちいい?」
「あっ、くっ、くすぐったい」
耳元で囁かれる言葉もくすぐったくて、体を妖しくくねらせてしまう。
段々息が荒くなってきた。
しかしベルトの手を緩めることはできない。