「おまえはまだ10代なんだから…この先好きになる人が……」
「ありえないよ」
「………それに…順番でいったら俺…早くおじいちゃんになるし」
「それが?」
「さっ、先に死ぬ確率も」
「父さんが死んだら俺も死ぬよ」
「なっ」
「だから、長生きしてね」
有志は耐えきれず薄い掛け布団を頭まで被った。
震えている。
智希はフっと笑うと、ゆっくり布団を引きはがした。
思いの外力は入ってなくて、簡単に有志の顔が現れる。
顔が、真っ赤だ。
「真っ赤」
「殺し文句だろ」
狼狽え言葉が続かない状態が数秒続いたのち、唇が何かに触れた。
智希の唇だ。
「んっ」
有志の喉が鳴り、そっと目を閉じる。
なのにすぐ唇が離れてしまって、思わず名残惜しそうに唇を突き出してしまった。
恥ずかしそうに目を開けると、音を立てて智希が上半身乗り上げ見下ろしている。
言葉を。
智希が声を出そうとした瞬間、有志が唇を開いた。
「俺も、智希が死んだら…俺も死ぬ」
もうすぐ40歳の男性が言う言葉ではない。
しかし、智希には心臓が止まってしまう程衝撃的な言葉で。
「父さっ」
「智っんっ」
ギィ、と簡易ベットが鳴りその音を消す様に二人は唇を重ね合わせる。
「んっはっちょっ、んっ誰か来るかもっ、んっ」
智希は有志の声が聞こえているのだろうか。
何度も角度を変え舌を押し込み絡み合わせる。
有志の口端からは飲み切れなかった二人の唾液が流れていて、枕を濡らし始める。
誰か来たら。
そう思っているのに、気がつけば有志の腕は智希の背中に手を回していた。
あの日の様に、初めて体を重ねた日の様に。
有志も唇を突き出し舌を押し込む。