恋ってことにすればいいんじゃないの後日談

閉店1時間前。現れるニット帽。もとい赤井さん。

「おお! ういちゃんの彼氏だ!」
「ヒデさん。そろそろ慣れてよ。もう聞き飽きました。赤井さんいつもと一緒でいいですか?」
「ああ」

いつも通り奥の席に座る赤井さんの注文をとる姿にヒデさんもおじいちゃんもおばあちゃんもみんなでニヤニヤ。他の常連さんも私に彼氏が出来たと見に来る始末だった。最近は落ち着いたけども。

赤井さんは忙しい中時間を空けて、時折こうして私を迎えに来てくれるのだ。今日はお迎えだけでなく、明日一応仕事がないらしく私の家にお泊まりの予定だ。楽しみだなぁ。

閉店作業も終え、夕飯の買い出しをして家に帰る。まだちょっぴり男の人が家にいるのに慣れないけれども、だいぶこの光景も受け入れられるようになってきた。赤井さんと一緒に夕食をつくり、小さなテーブルに並べる。いただきますと適当にテレビをつけて食べ始める。

「そういえば、赤井さんって出会った頃めちゃくちゃ強引でしたよね」
「いきなりどうした」
「いやそういえば、強引だったなぁって」
「作戦は練ってはいたものの俺も若干嫌われると思って焦っていたからな」
「作戦?」

やっぱり気づいてなかったかと笑った。何それ。

「実はういの事は喫茶店に入る前から知ってたんだ」
「なんか赤井さんには驚かされてばかりです。私達どっかで会ったことありますか?」
「いや、直接的には会ってないが」
「一方的に知られてたって怖いんですけど」
「まぁ、聞いてくれ。駅でお婆さんを助けてた事があっただろ。それと道案内を丁寧にしてたり。よく駅で見かけてたんだ」
「それで、喫茶店までストーカーしたんですか?」
「それは誤解だ。たまたま入った喫茶店にういがいてそれはそれは嬉しかったよ」

よかった。ストーカーじゃなかった。

「そこで働く姿をみてますますいいなと」
「私、そんなに好感度上げてたんですね」

肉じゃがおいしいし、やっぱ味噌汁はきちんと出汁とるに限るな。箸を進めながら赤井さん側からみた私の話を聞き続ける。

「それでもう一個仕掛けた。何かわかるか?」
「んーと。……お手上げで」
「考えるの面倒くさかっただけだろ。まぁ、いい。1週間店に行かなかったことだ」

鈍感な私でもわかる。アレによって私から初めてアクションを起こしたのだ。ああ、私出会う前から赤井さんの手中だったのか。単細胞な自分が恨めしい。

「はぁ、すごいですね。私はシナリオ通りに落とされたわけですね」
「上手くいってよかったよ」
「……罠にハマってよかったです」

だって今すごく楽しくて幸せだもの。こんなわざとは悪くない。

title:サディスティックアップル



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