// 死と眩暈








「まって」
「もう待たねェ」
「ん、ぅ」
 唇が離れないままで短い言葉でしか会話できない。呼吸の仕方も分からなくなりそう。顎を引いても獲物に噛み付くように追いかけられる。平常時よりも間隔の短い心音が、汞のような男の心臓を高鳴らせているのは自分なのだと、嫌でも知らせてくる。
「逃げ回りやがって」
「は、ッ、んん」
 べつに逃げてない。でも立場上俺が海賊に会いに行くのは変だし、君のことは職務でやっと目にするくらいだし。遠征中なんてずっと忙しいのに、俺が忙しいときにばっかりちょっかい出してくるし。本当は俺だって会いたかった。ちょっとだけ。首に腕を回すと腰の後ろに腕を回されてぐいと体を密着させてきた。早く肌に触れたいと先走る左手が脇のあたりからシャツの中に入ってきてる。手は俺より大きくて、ゆびがながい。ドア、鍵、閉めたっけ。
「もっかい言え」
「ふわ、みみヤダ」
 耳やめて。人よりも超人的に優れた聴覚がその声を覚えて、忘れられなくなる。慌てて近付けられた唇から距離を作る。
「聞きたい」
「いーやーだ」
 無駄な抵抗だと言わんばかりにそのまま持ち上げられて、足をバタつかせても揺らがないのが腹立つ。言うつもりもなかったし、ちょっと表現を間違えたってことにしてほしい。首が締まって苦しくなれ、と腕に力を入れる。自分で準備させて、ドアまで開けさせて。もう一度言わせなくたって、もう十分では。
 ちなみに、ベッドに下ろされて膝立ちのまま尻を掴まれ俺が返事できなくなり、二人とも無言になっちゃうあたりまで、言ってほしそうにしていた。

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 自分のシャツの釦を外す指で、初っ端からかなりキた。しがみついてくる手も、刺激から逃げる細い腰も、自分じゃ届かないとこまで拡げられて小刻みに震える腿も、たまんねェ。焦らされた甲斐すらあった。何度もイかせて、もう出ないと首を振るのを何度も追い立てた。
「あッ」
 極上の穴に仕上げた部分に自身をまた押し込んで戻す。遠慮せず体重をかけて短く悲鳴を上げさせたあとも、小さい尻を押し潰すように腰を止めない。するともう声になってない。荒い呼吸音の合間に掠れた声で譫言のように、きもちいい、と聞こえる。肌がぶつかる音させるほどのから、ゆっくりのストロークに変えると全身を震わせた。こっちも好きか。どっちが発情期の兎だか。
 痙攣が治まるのを待って、ぬるりと自身を取り出す。何度も出し入れされて充血してる窄まりから混ざりあった体液が糸を引いた。骨盤あたりを持って薄い体をひっくり返す。もう一度前からしたい。
「はぁ、っは、あ、ろーまって」
「ん」
 片脚持ち上げたまま数呼吸だけ止まってやる。ん、横からでいいか。
「待った、ご褒美は」
「ふぇ」
 もう片脚を跨いで、ひくついてる穴にゆっくりと体重をかけて入る。小さいケツに絞られて全身に甘い電流が流れる。
「ッ、あ、ふか、いぃぃ」
 鳴き声上げてるのに、身体は歓喜に震えてる。足の付け根がぴったりと組んだ。剥き出しの粘膜同士が吸い付き合って溶けそうだ。あー、あったけ。キツい内壁を擦りながら一度ぎりぎりまで抜いて、もう一度しっかり奥まで。
「あ、あ、ぁ、ーーーーッ」
 腰を使うたび、ふわふわの腸壁が俺を心地よく抱き締める。すぐイくし、すぐ泣く。痙攣してる内腿がエロい。なぁ他の男でもこうだったのか?後で名前言えよ。上官とかそのへんだろ。全員殉職させておく。そのまま奥と前立腺ばっか攻めると射精せずに何度か連続でイった。才能ありすぎ。荒い呼吸に阻まれながら、ほんとに、もうだめかも、と俺の腕に手を置いた。
「ほんとに、まって、おなかへん、なる」
「痛むか」
「い、たくはな」
「んじゃいいだろ」
 軽く揺するとそれだけで腰が跳ねた。
「あっ、や、やだ、よくないぃ」
「足りねェんだよ」
 顔の近くに手をついて視線を合わせて言うと、しばらく困ったように斜めから見上げ、しんじゃいそう、と呟いて潤んだ目を細めた。触るなと言われた耳が真っ赤だ。何度だって蘇生してやる。あとで耳もモフらせろよ。




/ 死と眩暈 /


↓ROOM317

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