異能学園デゼスポワール


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『個性の殴りあい』



 改めて班が揃ったところで、ヒロは全員を見回した。班を一言で例えると、個性的すぎる。それと、女子が少ない。3人とは。
 まず喧嘩ばかりする千秋と春樹、どんなときでも明るくしようとする翼とシェアス、無口で全く喋らないイリス、情報通の仮令、開脚男の綾部、『問題児』と呼ばれる三年の(この中で一番年上である)荒噛先輩、中等部生徒会長で優等生と言えるティーア、そしてヒロだ。
 個性的すぎるせいか、何だかちぐはぐしているような気もした。千秋やティーアに至っては班のメンバーの後ろからついてくるような形をとり、他のメンバーを避けてるようにさえ見えた。千秋は春樹と翼に言い寄られているが。

「せっかく同じ班になったんだから頑張ろうよ!」
「翼の言うとおりだぞ四ノ宮。皆で協力して化け物倒そうぜ」
「貴方達と協力するまでもないです。あんな化け物、一人で倒せます」
「言うじゃないかお前。俺達の好意はいらないってか?」
「少なくとも、貴方からの好意はいりません」
「ふ、2人とも……もう、また喧嘩して」

 翼がため息を吐いた。そのため息からは苦労しているんだなあ、と思うくらいに疲れているものだった。ヒロは視線をティーアに移した。中等部の生徒会長様も見事に二名の女子に引っ張られている。その女子は言うまでもなくシェアスとイリスだった。

「ほら! 早く行こうよ!」
「……化け物退治……」
「悪いけど2人でやってくれ。俺は今回、廃村の状況を六堂先輩に報告してから、廃村に出現する『ヒトならざる者』についても調べないといけないからな」
「あッるェエエ? ひょっとして怖じ気づいてる?」
「はあ? 俺のことなめてんですか?」

 シェアス達の誘いを断るティーアに、丁が煽るように言う。軽くスルーして終わりなのではと思ったら食いついた。もしかしたら負けず嫌いなのかもしれない。2人はまるで睨み合うように互いを見つめ合う。
 彼らも喧嘩コンビらしい。
 そんなこんなで、ヒロ達は班それぞれでジャンボタクシーで廃村の離れた拠点へと移動する事になった。

「では、行き帰り、よろしくお願いします」

 ティーアが運転手の中年の男性に挨拶をする。その中年の男性は微笑む。
 全員乗り込み、ジャンボタクシーが動き出す。ちなみにヒロの隣は当然のように綾部であった。
 移動中、とても静かであった。ヒロの隣にいた綾部は夜更かしでもしていたのか眠ってた。そのせいか、静かであった。先程の自己紹介といい、ここの班は肝心なところは静かなように思えてくるのだ。
 会話のないこの班に突然、春樹は話題が思いついたかのように話し出す。

「実は俺さ、夜に女性が魔物に襲われてるとこ助けたんだよ。夜だと魔物ってホント分かりづらいよな。でもその時は街灯があってうまく倒せたんだ」

 またもや沈黙。もはや異能学園ではふーん、でどうしたの? で済んでしまう。丁や千秋は明らかにそんな感じの顔をしている。話した後の沈黙にキツさを感じた春樹はぼそぼそと小声で謝る。横にいる翼が慰めていた。
 きっと沈黙が続いているのは、話題が思いつかないからだろう。皆それぞれ知らない人達がいる中で活動する訳か、変な事をして変な風に思われたくないんだろう。ヒロは心の中でため息をついた。

「ははは! 兄ちゃんよくやったなぁ!」

 どこからか笑い声と褒め言葉が出てきた。どうやら運転手の方が言ったんだろう。

「人の命を救ったんだ、兄ちゃんすげぇな!」

 その発言により春樹はまたぼそぼそとお礼を言う。運転手さん優しすぎる。この空気を和ませたりもするなんて。ヒロは思わず、涙しそうになる。
 そんなこんなで車が止まった。拠点となる場所に着いたのだ。
 皆、降りようとする中、ティーアがお礼をする。そこで運転手さんは頑張れよと元気付ける。変な班で良いことなさそうだと思っていたが、運転手さんのお陰で一気に調子が良くなった。

「では拠点とこれからの事について……」

 班ごとに整列をする。六堂は説明を始めた。
 綾部は後ろで立ち寝をしている。こっくりこっくりと電車に揺られているようにヒロにもたれかかる。ここで注意をすると目立ちそうなのでヒロは説明が終わるまで何もしなかった。

「これから廃村まで歩きますので、皆さん頑張りましょう」

 ティーアがそう言うが、丁はドコドコと先に進む。それを見ているティーアはもう行こうと合図を出す。研修開始。ヒロは待ち受ける運命を知る余地はなかった。


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